百六十三 ページ13
「あっはァ！」
それからまた数日後、興奮したように上擦った宇佐美の声が響き渡ったのはまたもや訓練場の畳の上。
しかし今畳に転がされているのはAではなく、その教官である尾形の方であった。
「お〜い、どうしたんだよ百之助ェ！部下が部下なら教官も教官だな？」
兵士たちの乱取りの訓練中ではあったが、普段から何かと顰蹙を買っている上等兵二人の勝負を、周囲は遠巻きにしながらも何となく注目していた。
そしてそれはAも同じである。
しかし結果は案外呆気なく、柔道の達人である宇佐美に射撃の達人である尾形が敵うはずもなく組み敷かれた。
馬鹿にしたようにせせら笑う宇佐美とは対照的に、尾形は相も変わらず無表情のままである。
「お前ら、似た者同士だもんな？色目を使って鶴見中尉に取り入った山猫と阿婆擦れ同士、僕が仲良く…」
「香坂二等卒 見とけよ、これが実戦のやり方だ」
宇佐美の言葉を遮るようにボソリと呟いた尾形の声は不思議と通り、そして言い終わるや否や尾形は自らを畳に押さえつける宇佐美の手首を片手で掴み、もう片方の手で拳を作ってその手首をなんと、そのまま
骨太な方であろう宇佐美の手首が、ゴキッと嫌な音を立てて折れる。
宇佐美は「は？」と顔を歪ませると、思わずつんのめるようにして畳に倒れ伏した。
この男が畳に転がるのを見たのは初めてだった。
周囲が騒然とする中、尾形はちょいちょいとAを手招きする。
「片手が折れてる今なら復讐のチャンスだぜ、二等卒」
「ふ、復讐…？」
「いつも酷い目に合わされてきたんだろ？」
Aはゴクリと喉を鳴らした。
宇佐美は怒り染まったとてつもない形相で、今にも立ち上がろうとしている。
考える暇もなく、無意識のうちにAは足を持ち上げ、思い切り宇佐美の折れ曲がった右手首を力を込めて踏みつけた。
宇佐美は歯を食いしばり意地でも声を上げないつもりのようだが、それでもその痛みと怒りに歪んだ顔を見ていると胸がスッとすいていくのを感じた。
「…ッお前ぇえええッ！！」
「失礼しました！教官が教官なら部下も部下ですので！」
「ぶはッ」
Aはこれまでのお返し、とばかりに素早く宇佐美の首から肩にかけて関節技を決め、初勝利の余韻に浸った。
月島軍曹に止められるまでは、まさに夢心地であった。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
