百六十二 ページ12
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遡ること数年前＿＿＿。
香坂Aはダンッと地面に背を打ちつけ、その衝撃に一瞬呼吸すら出来なかった。
なんとか息を整えて、自分を見下ろす嗜虐に歪んだギョロリとした目を見返す。
「オラ雑魚ッ！受け身も取れない無能めッ！死にたくなけりゃすぐに立て！」
「はい…」
鶴見が聯隊の兵士たちに自分をお披露目してから早数日、Aはこの宇佐美時重という男に扱かれていた。
直属の教育係は尾形上等兵であったが、軍人に必須な訓練である柔術に関しては、同じく上等兵であるこの異常者から学ぶよう命令されていたのだ。
宇佐美はフン！フン！と鼻息も荒く、まだ体勢も整わないAの襟をむんずと掴むと足も使わず腕の筋力だけでぶん投げた。
情けない悲鳴を上げながら再び畳に沈められるAに、宇佐美は追い討ちをかけるように怒声を浴びせる。
「この薄汚い阿婆擦れがッ！こんなチンケな身体でどうやって鶴見中尉に取り入ったんだ？」
「いえ、私は断じてそんな…」
「黙れッ！」
好き勝手に言い放ち、宇佐美は畳に転がるAの襟首を再び持ち上げる。
話の通じないこの男が、Aはとても苦手だった。
ある日アザと血に塗れた顔を宿舎の井戸で洗い流していると、背後に気配を感じて振り向く。
自分に割り当てられた教育係、尾形上等兵だった。
「ハハァ！なんだその不細工な面は」
愉快そうにこっちの顔面を指差して揶揄う教官に若干の苛立ちは募るものの、Aは疲れたようにため息を一つ吐くと何ともないように言った。
「宇佐美上等兵の有り難い指導によるものです」
「ああ… そういやアイツら、最近はお前を虐めるのにご執心だものな」
この顔をボコボコに腫れ上がらせたのは宇佐美だけではない、その取り巻きの一等兵連中もであった。
上下関係に厳しい男社会である軍内において、華奢で生意気なAは格好の餌食であった。
鶴見中尉が初っ端から女であることをバラしたせいもあるかもしれないが、例え自身が男だったとしてもこのような暴行は無くならない気がする。
「鶴見中尉に泣きつけばいいじゃねえか 得意なんだろ？
いけしゃあしゃあと嫌味を言う尾形に、キッと睨め付けるような視線を送る。
上等兵には性格が捻くれていないとなれない決まりでもあるのだろうか。
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ぽなふ(プロフ) - まるまさん» 嬉しいです〜完結まで頑張りたいです！ (11月4日 12時) (
レス) id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
ぽなふ(プロフ) - kuuualohaさん» ありがとうございます！またテンポ良く上げられたらと思います (11月4日 12時) (レス) @page12 id: 501bdc7901 (このIDを非表示/違反報告)
まるま - 何時も楽しく読ませてもらってます！これからも応援してます!!✨ (11月3日 22時) (レス) @page42 id: 176e021716 (このIDを非表示/違反報告)
kuuualoha(プロフ) - 更新待ってます(泣)！ (11月3日 7時) (レス) @page42 id: 8717a25739 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽなふ | 作成日時：2023年10月2日 8時
