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とくに抵抗することもなく、Aは沖田の方を見た。
「言っとくが総悟の部屋が一番ねェぞ」
「なんでですかィ、俺たち歳も一緒だし親睦を深めるのには最適でしょう?」
「お前ぐらいの歳のガキが一番がっついててすぐ手ェ出しそうだからだよ」
「ちぇ、ひでーや土方さん 俺はただ、何も知らない新人を調教してメス豚に育てようと思っただけなのに」
尚もブーブーと不満を垂れている沖田の年相応な表情と口にしたセリフとのギャップに、ゾクリと鳥肌が立つ。
さっき剣を交えたときにも若干感じたが、この沖田とかいう男、警察とは思えない倫理観の持ち主ではないか?
「もー、なんでそんなこと言うかねお前は!」
『あ、あの…別に私は、どこでも…無理を聞いてもらったのはこちらなので…』
「ほらァ!Aちゃん怯えちゃってるでしょーが!」
身体の悪寒を抑えるように自分を抱きしめ、ニタニタ舌舐めずりでもしそうな沖田の視線から逃れるA。
や、やっぱり都会の男怖い…!
「さっきまでの威勢はどうしたんだよお前…」
肉食獣のような沖田のオーラに気圧されているAを見て、土方も敵意を削がれたようだ。
呆れたように頭をぽりぽりとかき、どうしたもんかね…と唸る。
「じゃあ土方さんの部屋でいいじゃないですか」
「は?」
「土方さん仮にも副長なんだし、近藤さんの次に広い部屋使ってますよね それに、土方さんならコイツに興奮したりなんかしないんでしょう?ガキの俺と違って」
「そういう問題じゃ…」
「そういう問題ですよね?近藤さん」
「そういう問題だな、トシ」
「んな…!?」
そんな近藤さんまで!?という土方の批難の声は、ガヤガヤとした隊士たちのざわめきで掻き消された。
どいつもこいつも「副長ずりー」なんて、土方としては望んでもいない羨望の眼差しでいっぱいだ。
しかしそれを見るに、やはり他の隊士たちと同室では危ないという気持ちも殊更に強まる。
若い女にうつつを抜かし、士道から逸れる者も出てくるかもしれない。
「わーッたよ!ちゃんと仕切ってやるから、黙ってついてこい」
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作者名:ぽなふ | 作成日時:2022年12月31日 13時