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「俺がお前から永遠に一本を取らなきゃ、俺は永遠にお前を甚振れるって話だろィ」
人を喰ったような沖田の言い草に流石にイラッとして、Aはよろりと立ち上がる。
先ほどからグラグラと邪魔だった防具や小手を外し、ポイポイと場外へ放る。
周りでは万事屋や近藤、土方、そして見物に来た隊士たちが目を丸くしてこちらを見ていた。
『そっちがその気なら、構いませんね』
「おもしれぇ」
重しとなっていた装備から解放されたAは、畳を蹴ると身軽に宙へ跳んだ。
その勢いのまま沖田の顔面に竹刀を振り下ろし、いなされてもすぐさま再び畳を蹴って向かってくる。
今までとは違う戦い方に、沖田は首を傾げた。
「オイお前、さっきまでの道場剣術はどうしたんでィ」
『隊長さんが剣道はやりたくないようなので合わせました ここからは我流です』
鋭く直線的な沖田の剣筋がAの頭を掠めるもすんでのところで躱され、沖田はさらなる追撃のため足払いをしてAを畳に転がす。
馬乗りになった時点でAの敗北かと思いきや、振り下ろされた竹刀をまたもや頭をずらして回避し、身体を滑らせて沖田の足の間から見事脱出した。
予想以上に高度な攻防戦に場内は熱狂した。
「あの沖田隊長が女に苦戦してるぞ!」
「他の隊員たちもやられて転がってるし、一体あの女は何者だ!?」
「やっちまぇえ!沖田隊長!」
「いや、いいぞ女ァその調子だ!」
「あの生意気な隊長の負け面拝ませてくれ!」
好き放題ヤジを飛ばす隊士たち。
『結構嫌われてる感じですか?』
「アイツら…、顔覚えたからなコノヤロー」
そう軽口を叩きながらも、二人の剣技は止まらない。
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作者名:ぽなふ | 作成日時:2022年12月31日 13時