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「僕は死んだ方がいいのかもしれない」
言った。
ついに言ってみた。
聞こえるか聞こえないかの小さな声で。
蚊がなくような小さな声で。
なんだか泣きそうになる。
思ってたよりもずっと、自分の心は弱ってるらしい。
柊に嫌われるかもしれない。
だからどうして欲しいのって、突き放されるかもしれない。
そもそも、僕のこの言葉が聞こえていないかもしれない。
それでもいいやって思って言ってしまったけど、やっぱり怖い。
大切な人を失う怖さが、じわじわと僕を蝕む。
ふるりとまつ毛が震えて零れそうになる涙を堪えて、何も無かったかのように装って目を閉じた。
『誰かが欠けても地球は回りますし、嫌でも日常は続きますが、
生きる意味はあると思いますよ』
部屋に確かに響いたその声に、は、と頓狂な声を上げてしまった。
柊は何かを考えるように目を細めて、麦茶を飲み干す。
そして言葉を続けるように、すっと息を飲んだ。
『その人にしか生み出せないものって沢山あると思うんです。
河村さんしか生み出せないもの、河村さんしか出来ないことは沢山あるじゃないですか。
河村さんには生きる意味がある。
一概に"コレ"というのは言えませんけど。
河村さんじゃなきゃダメな理由は沢山ありますよ。QuizKnockには…私には河村さんが必要です。』
少し苦笑を交えながら、柊はそういった。
生きる意味…。
確かに感じた承認欲求が満たされる感じ。
微かに濡れたまつ毛にどうか気付かれませんようにと願って、ぱしぱしと瞬きを繰り返す。
僕は本当に必要とされてるのだろうか。
柊の言葉を疑いたくはないけど、そういうひねくれた考えが回転木馬みたいにぐるぐると回る。
我ながら甘えるのが下手だなと思う。
咄嗟についた嘘かもしれない。
面倒くさくなってそう言ったのかもしれない。
でも、柊の顔を、目を見る限り、さっきの言葉は全て嘘じゃない気がする。
思わず「柊、」と名を呼ぶと、にゅっと腕が伸びてきて、目にかかった前髪をさらりと梳かれた。
『髪、伸びましたね』
「切りに行くのめんどくさくて」
『邪魔でしょ』
「ちょっとだけ」
もうこの話は終わり。
言わずとも伝わる雰囲気が、そう物語った。
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あんころ - こんにちは、すごく文の雰囲気が素敵で、引き込まれました…!!ヒイラギさんのペースで更新されるのを楽しみに待っています (2020年4月3日 0時) (レス) id: 4b7a069960 (このIDを非表示/違反報告)
ヒイラギ(プロフ) - 燕さん» ありがとうございます!ゆっくりの更新になりますが頑張ります^^* (2020年3月10日 16時) (レス) id: 8efd38389c (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - この作品、とても好きです。更新楽しみにしてます。 (2020年2月3日 2時) (レス) id: 9037981a2e (このIDを非表示/違反報告)
ヒイラギ(プロフ) - うずきさん» ありがとうございます!嬉しいです^^* (2020年1月24日 21時) (レス) id: 4b5b27727e (このIDを非表示/違反報告)
うずき(プロフ) - 世界観が大好きです!最高すぎます! (2020年1月24日 1時) (レス) id: c78208ae40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヒイラギ x他1人 | 作成日時:2019年9月22日 16時