私が人であるのなら (ページ19)

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「……嬢ちゃん、この宝石はな、片割れを探し続けているんだ。この宝石は、もともと雫型の石で、それを誰かがすっぱり割っちまったんだ。それ以来、この宝石は呪いをかける。
……誰もが最初はこの美しい宝石に魅了されちまうが、次第にこの宝石は気付くんだとよ。「こいつは、私の片割れじゃない」って。だから、こいつは意志を持ち、所持者に呪いをかける恐ろしい代物だ。嬢ちゃん、これはやめときな。そもそもなんで嬢ちゃんみたいな子供がここに迷い込んだか知らねえが……」
「はい、お駄賃です。これ頂きますね」

　椅子に腰掛けていたはずの少女の姿はいつの間にか目の前へ移動し、そして店主が茫然とする間にしまっていたはずの金をいつの間にかカウンターに乗せ颯爽と扉を開けようとする少女の姿に、店主は困惑した。
――――なぜ、どうして。
　店主の経験上、そのネックレスを手に取って買いたいとまでは行ったものが多かったものの、何故か代金を出し、意気揚々と扉の方へ向かうときに、全員ピタリと身を凍らせてしまった。そして、その直後がたがたと震え、ネックレスを店の床に落として、カウンターに乗った代金など気にもしない様子で怯えて出て行ってしまうのだ。
　だが、先程ドアを開けて出て行ってしまった少女は、微塵も怯えていなかった。崩されない無表情と、水面のように凪いだ落ち着いた瞳には恐怖など微塵も。

　そして、店主は気付く。
　彼女の瞳の、その色を。フードの中からちらりとのぞいた、三つの蒼を。

「……ああ、まさか。こんなところで。懐かしい」
　
　蒼目は微笑んだ。