Story118 ページ44
目が覚めたら左腕の感覚が無かった。前払いということだろうか。
空港を出ると、そこは湿度の高い六月の成田そのもの。
「…懐かしい、な」
マレーシアに移住してからこっち、帰国はしていなかった。母国は一応母国なのだな、とそんなことを考えながらタクシーを拾う。向かう先は千葉。
カランコロン。
「いらっしゃいませー」
海沿いの道にあるカフェ。そこに彼女はいた。
「一名様ですか。どうぞ」
「…失礼。人を探しています。ああ、コーヒーをいただけますか」
「ブレンド？アメリカン？」
「ブレンドで。…お話を伺いたいのですが」
「はぁ。なんですか」
「五条Aという方を探しています。知りませんか？」
「知らないですね」
そう、五条Aは答えた。
「…失礼ですが、貴女のお名前は？」
「ナンパ？」
「違います。…貴女にそっくりなので」
「…ああ、そういうこと。私？えーっと…ああ、そうそう。亜翠真美。本当かどうか知りませんけど」
カウンターの中で、彼女がコーヒーを淹れ始める。その時間が、ゆっくりと過ぎていく。
「どういうことでしょうか」
「私覚えてられないんですよ。ルーティーンになってること、決まってること。それ以外のことは何も覚えていられない。一日くらいしか記憶がもたない。…ってことも覚えていられないんで、このカウンターの中に全部メモ貼ってあるんです」
「…つまり」
「医者は、健忘症の一種じゃないかって」
「先ほどまでの会話に、不自然な点は特になかったと思うのですが」
「名前を聞かれたらナンパかどうか聞けって。もうすぐ帰ってくるんじゃないかな」
はい、おまちどうさま。
カタンとコーヒーが置かれる。その手には、大きな傷跡が残っていた。
「…ああ、これ？なんかばーちゃんが私を引き取ってくれたときには、もうあったみたいですよ」
「不躾に見てしまい、申し訳ありません。…引き取られた」
「そう。記憶を継続できない私は、施設にいたらしいんですけどね。ばーちゃんが、なんでか引き取ってくれたんで今こうして戸籍を登録して、亜翠真美って名前になってる。…詳しい話を聞きたきゃ、ばーちゃんに聞いてくんないですかね。私、昨日のことも覚えてられないから。何が本当かとか、わからないんですよ」
それじゃ、ごゆっくり。
カウンターの中に入ってかちゃかちゃと洗い物をする、彼女は。
間違いなく、五条Aなのに。
(頭が痛い)
(どうして)
(どうして、こうなった？)
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灯霧(プロフ) - 森さん» 応援ありがとうございます！また七海夢書くと思うので宜しくお願い致します！ (2022年2月28日 0時) (
レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
森 - YouTubeのはきっと、千葉茉吏衣というアイコンの人だと思います。 これ面白かったです❗応援してます‼ (2022年2月25日 0時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - 灯霧さん» YouTubeでも似たようなｺﾒﾝﾄをみた事がありまして,もしかしてと思ったのですが,そうだったんですね…。 ありがとうございました。 (2021年12月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 福寿茶寮さん» 申し訳ございません！私が気づいてなかったばっかりにご不快な思いをさせてしまいました。報告し非表示にしてあります。あの人はどこの七海夢にも出没するアラシみたいなものです。今後も見つけ次第非表示にいたします。お手数をおかけいたしました…！ (2021年12月22日 15時) (レス) id: 659f7a97b9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - マリイ(七海建人の嫁)さん» 変な事書くのやめて下さい。 (2021年12月22日 11時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2021年8月3日 16時
