Story317:悲鳴嶼side ページ30
二人きりになった悲鳴嶼は、すぐに輝利哉へと頭を下げた。
「改めて、ご健勝で何よりです。輝利哉様…」
「ありがとう、行冥」
かつての父を彷彿とさせる振る舞い、それは鬼殺隊の当主としての振る舞いだ。本来なら彼は、もうそんな煩わしいことからは解放されるはずだった。だが、鬼殺隊の解散と共に生き残った隊士たちの今後の諸々や葬儀などをしている時に、今回のことが起きたのだ。非常事態だと判断したし、それなりに緊張も走った。それは最初に不死川がいなくなった時、悲鳴嶼自身が経験した通りだ。
「輝利哉様…。なんとお詫び申し上げたら良いか…」
「構わないよ。行冥自身でどうにもならない、大きな力の影響だったのだから。…行冥、今後はどうするつもりなんだい？」
もちろん、その話をするために今ここにいる。悲鳴嶼は迷わず顔をあげた。
「私は元の世界に戻るつもりでおります。輝利哉様やかなた様、くいな様をお守りしたいと…」
「そうか。それはとても嬉しいよ」
悲鳴嶼の言葉を聞き、輝利哉は穏やかな笑顔で答える。だが突然、真剣な表情を浮かべた。
「だが、それは本当に正しいだろうか？」
「…と、おっしゃいますと」
「行冥はこちらに来てから、Aさんにとても助けられたはずだ。彼女に恩を返さず私の元に戻るのが、本当に良いことなのだろうか？」
「…それ、は」
輝利哉の指摘に、悲鳴嶼はわずかの迷いを見せる。実際、それを理由に彼はここに滞在する期間が伸びることを了承した。そして彼女が与えてくれたものは、その期間だけで返し切ることができるものではない。文字通り人生を歩む術を与えてくれたのだから。
そして、それ以上に。こちらの世界での生活に支障が出ないよう、元の世界に戻っても知識が無駄にならないよう、点字を教えてくれている彼女の優しさは。
「行冥。私たちは、もう十分だ。産屋敷家の悲願は達成された。私たちはこれから、それなりに平和に生きていられるだろう。呪いがなくなった以上、長生きをしてやるつもりだよ。…行冥も、新しい人生を歩んでみないかい？」
「…輝利哉様。ですがそれでは」
「無論、無理にとは言わない。決定するのは行冥だし、こちらに戻ってくるのなら大歓迎するよ。…悔いの残らない選択をしてほしい。可能性を、最後まで追求しておくれ」
「…は、かしこまりました」
(盲目的に輝利哉様の元に戻ることを)
(良しとはしない)
(私は私自身の答えを出さねばならない)
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灯霧(プロフ) - シンヤさん» コメントありがとうございます。いまとてもバタバタしているのですが必ず更新いたします！ (2022年7月19日 21時) (
レス) id: e0bf1f0d56 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年7月14日 2時) (レス) @page47 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - pppさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて光栄です！この先をどう進めていこうかというなは決めているのであとは書く時間だけなのですが…なかなか難しくて申し訳ありません。でも最後までやりますのでお待ちください！ (2022年5月23日 14時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
ppp - この作品が好きで最初から何度も読み返してます。更新、なかなか大変かと思いますが、続きを楽しみにしております。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: f728de7b66 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - むるさん» ありがとうございます、励まされます！ (2022年3月28日 21時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2021年12月4日 15時
