【鬼滅の刃】引きこもりニートしようとしたら鬼殺の剣士がいらっしゃったようで……？2【逆ハー】

番外編:胡蝶しのぶ生誕記念:胡蝶side ページ20

少し遅いくらいの朝に突然始まった、Aさんとのでぇと。帽子屋から始まり、お茶の時間のスフレ(とてもふわふわでトロトロで美味しかった)を堪能して、会話を楽しんで。雑貨屋にいけば髪留めや首飾り、カバンやお財布などを私に合わせウンウン唸る姿。それを見て全くなにも察せないほど、私は野暮じゃない。すくなくともいま、Aさんは私の装飾品を選んでいる。
でもいらないと言えば、彼女の気持ちも傷つけてしまうだろう。それは申し訳ない。かといって、こちらの貨幣を持っている訳でもない私が自分で買います、とは言えなくて。
悶々としていたら、よし、とAさんが顔を上げた。


「次のお店、いこ！」
「は？ここでなにか買うのでは…」
「保留！色んなもの見て、これだってものに出会わなければ…買わない可能性だってあるんだよ。ウインドウショッピングっていうんだけど」
「は、はぁ……」
「おっ、ここはアクセ専門ですな！何かないかなぁ、なにか」


指を滑らし、耳飾りを見るAさんの表情は、真剣そのもので。どこからともなく、居た堪れなさが込み上げてきた。私なんかにそんな時間とお金をかけなくてもいいのに、と。


「あっ、これにしよう！どう？しのぶちゃん」


差し出されたのは、小さな銀色の蝶と金色の蝶が2枚ずれて重なっている、首飾り。


「胡蝶だから蝶モチーフなんて…安易かな？」
「そんなことはありませんよ。私の髪飾りも、蝶ですしね」
「じゃあこれにしよう！」


バーッと会計をしに走る彼女を見送り、さてと吐息を漏らした。このまま無駄遣いをさせる訳には行かない。たかが居候のために。


「お待たせ！……どうしたの？しのぶちゃん」
「いえ…それよりそろそろ帰りませんか？夕飯のこともありますので」
「え、もうそんな時間！？……じゃあ、ほんとは家に帰ってからきちんと渡したかったんだけど、これ」


差し出された小さな袋。簡易包装の中身はさっきの首飾りだ。


「…誕生日だからといって、祝う必要性はないのですよ？」
「でも私は祝いたかったの！…しのぶちゃんに会えたこと、本当に感謝してるから」


ピリピリと包装を丁寧に破ったAさんが、首元に手を回してそれを付けてくれた。


「うん、すごく似合うよ。ハッピーバースデー、しのぶちゃん。生まれてきてくれて、出会ってくれてありがとう！」


(その笑顔に、泣き出しそうになる)
(それはこちらのセリフだから)
(……私と出会ってくれて、ありがとう)

Story64→←番外編:胡蝶しのぶ生誕記念

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す