story31 ページ35
寝ているAの横に飛びうつり、ミケはため息をひとつ。
「……A」
「ミー？」
ぱちっと目を開けたAに、ミケは手を差し出した。
「怖いのなら、慣れればいい。俺と一緒に飛んでみろ」
「いや」
即答にめげそうになりながら、ミケは説得を続ける。
「……立体機動で本当に『飛ぶ』ことはできないが、その感覚を知ることはできる。お前は俺にしがみついていればいい」
「……し、る…かん、か？」
「…鳥の気持ちを、少しはわかる」
「……こわ、い」
「ああ。だから、俺がお前を背負って飛ぶ。お前はなにもしなくていい」
どうだ？と聞いてくるミケの手に、躊躇いながらではあるもののAの手が重なった。
ヒュンッ！
「ひ、う！」
「大丈夫だ。怖くない」
立体機動装置に体重がかからないようAを紐で固定したミケが、いつもより数段遅いスピードで飛ぶ。Aの足は突っ張って、ぴんっと伸びていた。足にしっかりとした支えがあっては意味がないからだが。
「A。危ないから、前に伸ばすのはやめろ」
「できる、ない！」
「……できない、か」
ここで暴れださないだけ我慢しているのだろう。だが、腰の辺りからぴんっと伸びている足は、かなり邪魔だ。
(……何とかするか)
ぎゅう、としがみついてくる力に、ミケも腹を括った。今まで自由気ままに生きてきたAが、ここまで恐怖を感じながら我慢しているのだ。シャンプー大戦争の時とは比べ物にならない。
タンッ。バシュッ！ヒュンッ！
木に足をつき、アンカーを射出、飛ぶ。それを繰り返している間に、少しだけAの力が緩んだ。
「……前を見てるか？」
「む、り！」
「……少しだけでいい。目を開けてみろ」
「ウ、ウゥゥ」
「少しでいい」
その声音は優しく、Aは勇気を振り絞って少しだけ、目を開けた。
視界に飛び込んだ空の広さに、息を飲む。
「………あ、ぁ」
「……」
スピードは緩めず、移動を続ける。空が遠くなり、そして近くなる。見たこともない世界が広がっていた。
「……っ、う、…」
涙が溢れる。美しい、という言葉は理解していなかったが、Aはその世界に涙をこぼし続けた。怖いという感情より、そのわからない気持ちの方が上回っていた。ミケは、ガスが切れるまで泣くAをとがめることなく、止めることもせずに飛び続けた。
(この広い世界を知ってお前が進むなら)
(俺はいくらでも飛ぼう)
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灯霧(プロフ) - darkroseさん» ありがとうございます！この話は笑いを取りにいってみました！（←）おたのしみくだされば嬉しいです！ (2015年5月7日 0時) (
レス) id: 675366c207 (このIDを非表示/違反報告)
darkrose(プロフ) - ９話面白いです！今から全部読ませていただきます！ (2015年5月6日 11時) (レス) id: b09570af35 (このIDを非表示/違反報告)
☆ユウ☆ - 一杯本読みます!!!頑張ります!!!!!! (2015年4月6日 17時) (レス) id: ef0a60f552 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ☆ユウ☆さん» え！？いや……一杯本読めば、言葉が勝手に出てきますよ…？昔からなので…それくらいしか思い当たらないです… (2015年4月6日 17時) (レス) id: 675366c207 (このIDを非表示/違反報告)
☆ユウ☆ - 小説書くコツを教えてください…(-｡-; (2015年4月6日 16時) (レス) id: ef0a60f552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2015年4月5日 9時
