story29 ページ33
部屋を出たAは、迷うことなく本部の屋上へ向かった。外に出る扉を開けると、ミケが一人佇んでいる。
「……ミー」
「！？Aか…」
長い森暮らしで培われた習性は、目立つところはあらかた矯正できていた。だが、気配を消すことだけは何度言ってもなおらない。
「……びっくりさせるな」
「…ごめ、ん」
ミケの足元にちょこんと座る。ミケがAの隣に腰を下ろした。
「ミー、怒ってる？」
「……ああ」
「た、ら…誰に？」
「……さぁな」
ただ、もどかしい怒りがあった。何故、Aの命が狙われなければならない、何故彼女は普通になれない。それが拳になり、地面を殴り付ける。
「っ！」
「……ミー、だめ」
赤くなった手を、小さな両手が包み込んだ。二ヶ月前より柔らかくなってはいるが節々がしっかりとしている特徴的な手。
「……離せ」
「だめ。ミー、傷つく、いたい。ミー、優しい。だから、いたい」
「…？」
困惑が表情にでた、それを察し、Aは言葉を探しながら話してみる。
「ミー、優しい。優しい、け、ら、か、ら、優しい、から」
正しい単語を選び、繋げ。それは普通の会話より時間がかかる分、ミケの胸にストレートに落ちてくる。
「私を殺す、し、たい、殺したい、のひと…に？怒っ、て、る？」
「……あぁ」
それは間違いない。Aを殺したいと思う奴らに怒鳴りたかった。こんなにも一生懸命生きている命を奪うのかと。
「……ミーに、怒ってる？」
「……あぁ」
何もしてやれない自分がもどかしすぎる。
「ミー…」
「……」
「私は、殺す…せな、さるれ…？殺され、ない。だか、ら？だから、ミー、傷つく、つけ、ないで。ミーが、いたいの、いや」
Aがここまで長く話したことがあっただろうか。いや、ない。つまりそれだけ、ミケを心配しているのだ。
そっと手を伸ばして、手を包む両手にのせた。
「…ありがとう、A」
(彼女の必死さが伝わってきた)
(俺が自分を傷つけるのは嫌だと言ってくれた)
(だから、ありがとうを)
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灯霧(プロフ) - darkroseさん» ありがとうございます！この話は笑いを取りにいってみました！（←）おたのしみくだされば嬉しいです！ (2015年5月7日 0時) (
レス) id: 675366c207 (このIDを非表示/違反報告)
darkrose(プロフ) - ９話面白いです！今から全部読ませていただきます！ (2015年5月6日 11時) (レス) id: b09570af35 (このIDを非表示/違反報告)
☆ユウ☆ - 一杯本読みます!!!頑張ります!!!!!! (2015年4月6日 17時) (レス) id: ef0a60f552 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ☆ユウ☆さん» え！？いや……一杯本読めば、言葉が勝手に出てきますよ…？昔からなので…それくらいしか思い当たらないです… (2015年4月6日 17時) (レス) id: 675366c207 (このIDを非表示/違反報告)
☆ユウ☆ - 小説書くコツを教えてください…(-｡-; (2015年4月6日 16時) (レス) id: ef0a60f552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2015年4月5日 9時
