story18 ページ20
朝、六時。起床時間を告げる鐘の音と共に、Aは中庭へ出た。懐中時計で時間を確認しながら、周囲に視線を巡らせる。すぐにバタバタと走ってくる足音がした。
「せ、セーフ！？」
「アウトだ。三十秒遅刻。んで、さっさと敬礼しろ、死ねばいいのに」
ファーランの言葉に無情な返答をしたAの視線が、膝に手を当てて呼吸を整える三人に突き刺さる。なんとか荒い呼吸を納めて、三人の身体が直立になった。敬礼をする。
「ファーラン、拳は上向きだ。死ねばいいのに」
「あ」
「イザベル、手が逆。死ねばいいのに」
「え！？あ、ヤバ…」
「………リヴァイ」
言うや否や、Aの蹴りがリヴァイのこめかみに炸裂した。予備動作なんて全くない、完全な不意討ちだ。
「敬礼は完璧だが、その視線はいただけねぇ」
「この…暴力女…」
「お前は鳥頭か、僕の事はお姉様、もしくは司令と呼べと腐るほど言った筈だぞ。死ねばいいのに」
地面に倒れているリヴァイを冷めた目で見つめ、その視線が恐怖に色づく二人に向けられる。
「三十秒の遅刻だから、練兵場三時間走り込みだ。さっさといけ、グズ共」
パンッ！と手を叩けば、ひきつりながらもファーランたちがリヴァイを助け起こして走り始める。あのリヴァイが、なす術なくやられるのだ。逆らったらどうなるか、命の保証すら無いかもしれない。
「…やっているな」
「そりゃあな。先ずは時間厳守を徹底する」
背後からミケの声がして、振り返った。その手には山のような書類が抱えられている。さらにその後ろには、兵士三人がかりで机と椅子を運んでいた。
「素朴な疑問なんだが」
「なんだ」
「外でこの作業をする必要があるのか…？」
わざわざ机と椅子を持ってきてもらってまで練兵場から離れない意図が、わからない。首を傾げるミケに、Aは口元だけをつり上げた。
「めんどくせぇだろ、いちいち部屋に戻るのも」
「………やはりな」
(司令！こちらでよろしいでしょうか！)
(あぁ。…文鎮があったはずだが)
(はっ！探して参ります！)
(あぁ、別にいい。僕の元から逃げるなんて、死ねばいいのに)
(文鎮はそもそも生きていないぞ)
(いちいち突っ込むなよ、ミゲ)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灯霧(プロフ) - 777さん» 普通のペンだと難しいとおもいますよー。私も姉に投げつけたいww (2015年7月16日 9時) (
レス) id: 3be15bf116 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 南湖さん» 万年筆のようなものを想定しているので、返しは自作でしょうwwありがとうございます！頑張ります！ (2015年7月16日 9時) (レス) id: 3be15bf116 (このIDを非表示/違反報告)
777 - ↓いったい何に使う気ですか;…と言いつつボクも欲しい！弟に投げつけたい！！自分のペンにカエシ付けられるかな… (2015年7月16日 0時) (レス) id: 1bd62eb53b (このIDを非表示/違反報告)
南湖(プロフ) - ペン先に返しがついてるペンってどこに売ってるんでしょう。欲しい← 更新頑張ってください！ (2015年7月15日 22時) (レス) id: 160e01a0b4 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 777さん» 固まらせたかったんです（←草がはえて嬉しい！ (2015年7月14日 23時) (レス) id: 3be15bf116 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯霧
| 作成日時：2015年6月27日 8時
