Chapter 06... ページ8
あの件以来、出水にはひとつ分かったことがある。
米屋にも同じクラスのやつにも、多分ではあるが由良にも知られていない事実。
頬杖を付きながらバレないようにAを見ていると、クラスの女子が話しかけた。
「 ねえ、明日の体育何すんだっけ？ 」
「 バドミントンらしいよ。ラケット持ってこなきゃじゃん。 」
このように、誰でも答えられるような問いに対しては間髪を入れずに教えてくれる。
だが、なんというか。
それ以外のことを聞いたり話したりすると、自然に、違和感なく由良を勧めてくる。
「 ごめんA〜、さっきの黒板の問い教えて欲しい… 」
「 あ、そこならお姉ちゃんが得意だよ。あとで声掛けよっか？ 」
「 マジ！？たすかる！ 」
まさに、この会話。
本当に自然すぎて気付かない。
理由は分からないが、頑なに由良へと誘導する。
最初、と言うより何も考えずに過ごしていればただの親切心でより良い選択をさせているのかと思ったがどうも違うらしい。
意識してみると、違和感があるほどなのだ。
「 わっかんねーなぁ… 」
「 オレらはお前のヘタレ具合が分かんね〜よ。 」
「 ねー 」
「 うわっ！ 」
いつの間に机へ。
驚いて椅子から転げ落ちると、クラス中の視線がこちらへ向く。
当然、Aも視線を向ける一人であって。
小っ恥ずかしい気持ちが徐々に自覚し始め、耳が紅くなった状態で立ち上がる。
「 ………悪ぃ。 」
「 あっはっは！出水何してんだよー！ 」
「 びっくりしたー 」
びっくりしたのはこっちのセリフだ。
クラスに醜態を晒したことなのか、それともAに間抜けな姿を見られたのか。
理由はどちらか分からないが、耳から熱が引かないまま二人を恨めしそうに睨んだ。
「 おまえら…！ 」
「 きゃ〜出水がキレた！ 」
「 うちの妹盗み見してたくせに〜！ 」
「 はっ！？ 」
しっかりと見られていたのだ。
毎日凝りもせずに弄りに来る二人にはむしろ称賛したいほどである。
いつもの事ではあるし、不快かと聞かれればそうでは無いのだが。
しかし精神的被害があると黙って見過ごす訳にもいかない。
今日こそはキレてやろうと意気込むが、やはりこの手に関しては頭が上がらないのだった。
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
