Chapter 20... ページ22
あれはいつの頃のことだったか。
確か、出水がAを好いていると由良にバレて間もなかったはず。
健気に一途に目で追っている出水を満面の笑みで由良は応援した。
「 出水くんには特別に色んな話してあげるねっ 」
「 パス。 」
「 Aはとっっても可愛いの！ 」
( 聞いてねえな。 )
うっとりと、恋焦がれる少女のような表情でAについて語り始める。
呆れながらも気になる出水は話だけは聞いていた。
「 まず幼稚園の頃の話なんだけどね！ 」
「 まて、長くなるだろそれ。 」
「 双子だから別の学級に入れられたんだけど、Aが私と離れたくないってギャン泣き。もうこの時点で可愛いでしょ？ 」
「 ……聞いてねえし、幼馴染にマウントとられるヤツの気持ちがよくわかる。 」
確かに可愛らしいエピソード。
だがここでそう言うと彼女は調子にのってさらに会話を広げてくるはずだ。
ウザいやら悔しいやら色んな感情が渦巻く予感がして、黙って聞いていた。
「 次は小学校の頃なんだけど〜 」
( これ日が暮れんだろ。)
「 Aが熱で修学旅行に行けなかった時、あの子私のパジャマ着て寝てたらしいの。"…由良が居ない"って！ 」
「 いでででで！！叩くな！ 」
「 あっ！興奮しちゃって…ごめんね出水くん。 」
謝る気がないなら謝罪するな。
申し訳なさそうにしているのかと思ったら、嬉々とした表情のまま謝罪の言葉を述べていた。
確実に、悪いと思っていない。
「 良かったねぇ出水くん！この話聞けたの出水くんが初めてだよ。 」
「 そりゃ光栄なこった。 」
「 でしょ？あとね、あの子とっても絵が上手なの！前Aの部屋に入ったら私の絵があってね。聞いたら"由良が綺麗だったから"って！ 」
「 まだAの話続くのかよ… 」
にしても"絵"、か。
聞いたことも見たこともない彼女の新たな一面を知れた。
内心知れたことに対する若干の喜びを秘めながら、ふと気になったことを由良に聞いた。
「 昔、Aもお前のこと由良って呼んでたのか？ 」
その疑問にペラペラと語っていた由良の口が止まる。
そして惚気は止まり、人差し指を顎に添えて考えた様子を見せた。
「 確かに、そういえば 」
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
