Chapter 10... ページ12
「 そろそろ授業始まるし、戻ろっか。 」
「 おー 」
一頻り笑い終えた彼女は切り替えたように動き始めた。
近くにあった時計を見ると、確かにもうすぐ授業が開始される時間である。
急いで鍵を閉めて、教室へ行かなければ。
そう思いながら、もう一度建付けの悪いドアを横に引き、鍵穴に差し込む。
「 ……？ 」
「 どうしたの？ 」
「 あ、いや… 」
開けた方のドアに負荷をかけながら鍵穴に差し込むがやはり入らない。
放置しすぎて鍵穴すら錆びてしまっているのだろう。
女の力で何とかなるようなものでは無さそうなので、一人で試行錯誤するがやはり閉まらない。
「 ……あ。 」
「 チャイム鳴っちゃったね。 」
授業が始まってしまったようだ。
だがもういい。それどころの騒ぎではない。
腕力に任せて鍵を差し込むが、このままだと鍵が折れかねない。
担任に叱られるのも面倒なため、どうしたもんかと考えているとAに代わってみてと言われる。
「 ……ふっ…！ 」
「 おい爪折れるぞ。」
「 痛い…… 」
「 そりゃな。 」
出水の力で何とかならなかったのに、Aの力で何とかなるはずがない。
そう思うが頑張る様子が少し心擽られてしまう。
こんな時に何を考えてんだ、やめろ。
十数分格闘するが鍵はぴくりとも回らない。というか差せない。
このまま放置して職員室に向かうか？
いや、でも実際閉めてあったのだから何かコツがあればすぐに閉まるのでは？
考えていると、思い付いたかのように当然Aが声を上げた。
「 出水、手伝って。 」
「 いーけど何すんだよ？ 」
「 私が鍵穴に差し込む役割担うから、出水は両側のドア、グッとやってて。」
「 あー、りょうか……い？ 」
普通に頷こうとしたが、冷静に考える。
つまり、Aが鍵穴の前で待機した状態で引きドアを強く閉めるように左右へ力をかければ良いんだな？
でもそうなると、どういう体制になる。
Aに後ろから覆い被さるように、ドアを、閉めなければならない。
「 出水？ 」
「 あ、えーっと……ハイ。 」
ドアが閉められないという状況を打破すべく、我慢しなければならないのだ。
そう言い聞かせてドアに力を込める。
せめて邪な気持ちを強めまいと、上を見上げながらドアに力をかけた。
「 あ、閉まった！ 」
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
