ミスユー ページ5
午前1時半
いつものギターを持って小さなステージの椅子に座る
まばらに拍手が起きる
お客さんは少ないのにいつもより緊張する
あの人いるのかなと思ってカウンターに目を向けるとあの人はいなかった
30分かけたのに、、と残念に思ったけど歌ってる途中に来てくれればいいな
一曲目はSwallowtai Butterfly〜あいのうた〜
二曲目は歌舞伎町の女王
そして三曲目はミスユー
結局、あの人来ないのかな
ミスユー歌っちゃうよ
カランコロン
ダンッ！！
勢いよく扉が開き、この空間にいる全ての人の視線が集まる
あ、きた、、
「ハァハァ、、」
「、、、いらっしゃい」
さすがに月さんも驚いた表情だった
カウンターに座ると、視線に気づいたのか
小さな声ですみませんと謝っていた
可愛らしい所を見たなと笑ってしまった
ポロン とギターを鳴らすとお客さんの注目がステージに集まる
「今日も綺麗な満月ですね。冬も近づいてきて夜空が綺麗に見えますよね？昨日、月さんに頼まれて買い出ししてる時に夜空見ながら歩いていたら、危うく電柱にぶつかる所でしたよ」
お客さんがクスッと笑顔を見せる
「じゃあ、最後に星野源さんのミスユー」
拍手が鳴る
あれ、、、出だしの音なんだっけ
やばい、、演奏が飛んだ、、、
拍手が鳴り止む
冷や汗
真っ白
ステージに向かって来る足音
あの人だ、、
私のギターを持つとステージに座り込み
「歌って」
唇でそう言った
また拍手が鳴る
「いつも通りまぶたを開けて」
午前3時
お客さんもいなくなる頃
「本当にありがとうございます！！」
「いえいえ、そんな、、」
そんな、勢よくお辞儀しなくても、、
彼女は90度お辞儀をして涙ぐんでいた
「ああいうの初めてで、頭が真っ白になってそんな所を助けて頂いたので本当に命の恩人レベルです！」
「ふふっ、命の恩人って」
「あの、、助けてもらって何ですが頼み事してもいいですか？」
眉毛をへの字に曲げ、僕の顔を覗き込む
短時間で表情がコロコロと変わる人だな
面白いから好きだけど
「えーっと、私の先生になってください！！！！！！」
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作者名：怜 | 作成日時：2016年11月4日 11時
