全ては己を知る為 ページ37
「…嫌な夢だよ、全く」
懐かしい夢を見た。ただの記憶の一部に過ぎないのに、とんでもない悪夢に成り下がったものだ。
だだっ広く静まり返った部屋。とっくに日も暮れてしまって、栄養をくれと腹がキュウと音を立てる。
(なんか食べるもんあったっけ…)
いや、何も無いな。冷蔵庫にあったのは初めからあったミネラルウォーターのみ。今何時だ？…18時か。意外とそこまで更けてる訳でも無いんだな。
「……はぁぁぁぁぁあ」
自分の思いを誤魔化す様に盛大にため息を吐く。胸のしこりは当然消えない。
…思えば始めから、イルミは私にあの男を重ねていたのかも知れないな。
(…腹立つ。イルミの中で私は『私』じゃなかった。)
幼い頃の狭い世界に居たのは師匠とイルミとクロロくらいなのに、…なんだか裏切られた様な気分だ。
ギュッと唇を噛み締めると口内に鉄の味が広がった。
足元に散らばった本をすり足で払い除け、のしのしと備え付けてあったキッチンへ向かう。冷蔵庫を開けミネラルウォーターを取り出しバタンと音を立てて閉じた。
…すると、背後に人の気配。
「よ」
「ノックしてくださーい。」
「そう言うなって。来るの分かってただろ？」
大きなビニール袋を下げたキルアは悪びれる様子も無くズカズカ上がり込んだ。
「きったねー、一日二日でここまで散らかすか？フツー」
「チョコロボくんとっ散らかしてるキルアくんに言われたくないですー。」
「そんな事言っていいのか？せっかくメシ買ってきてやったのに。」
そう言ってビニール袋をぶらぶらさせる。少女はため息をついてから、零れるように笑った。
「ありがと」
「どういたしまして。」
「にしても珍しい、キルアにしては気が……っておい！材料ばっかじゃねえか！作らせる気だな！？」
「気分転換も必要だろー？」
「おまえなぁ…ったく、」
私の気持ちを見透かしているのかいないのか。…多分前者だ。
「…なら、ゴンの部屋のキッチン借りて皆で食べよう。仲間外れにしたらアイツ拗ねるからな」
「確かに。誰かと違ってねちっこくはないけど」
「いつかキルアに出す食事、ピーマン増し増しにしてやるからな。」
「うげェ」
嫌そうな顔をしたキルアは、そそくさと廊下へ向かってしまう。少女は何かを堪えてから、少し笑った。
『もうさ、俺たちみんな独りじゃないんだよ。』
『だからさ、背負わせて欲しいな。俺たちにも。』
(…あぁ、ホント)
(…救われてる)
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かぴばら2(プロフ) - mzさん» ワー！！！コメントありがとうございます！シリアスな時はとことん暗く、その分ほのぼの回ではゆるっゆるに書かせて貰ってます！！！長い事書いてるのにまだゴン達の夏休みは来てません…！！更新がんばります！ (2021年7月22日 21時) (
レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
mz(プロフ) - 1作目から途中までですが、一気に見させていただきました！シリアスな場面の緊張感や主人公達のほのぼのとしたやりとりのギャップが凄すぎて、圧巻でした…。ゆっくりと、むふふとしながら楽しませて頂きます…！！ (2021年7月22日 2時) (レス) id: 77bee458f3 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» この作品に触発されて…！！？ヤバいっすね…ニヤニヤするぐらい嬉しいです。ぶっちゃけハンタ作品は鬼を滅する！！とか呪いと戦う！！とかより全然供給少ないので、こうして触発されて書いてくれる方が居るのがすごく嬉しいです！コメントありがとうございます！ (2021年2月20日 14時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» 戦闘描写ってめっっっっちゃ難しいですよね！！？夢主ちゃんには超近距離でボコボコにしてボコボコにされて欲しいです…(歪んだ愛)鼻血が似合う主人公を目指してます。師弟対決私も早く見たいです() (2021年2月20日 13時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 連続コメ失礼します！戦闘描写が大好きです。戦闘シーンまで読み込んだ作品は初めて。夢主ちゃんの超近距離な戦い方が性癖に刺さって抜けません。超絶私事ですが、かぴばらさんの作品に触発されてハンタ作品を書き始めました。師弟対決をお待ちしてます(ｺｿｯ (2021年2月19日 18時) (レス) id: e15740c466 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぴばら | 作成日時：2020年12月6日 10時
