scene231 ページ31
それから数日が過ぎた。
相変わらず練習漬けの日々。おれは暇を見つけては、 Aの過去の映像を漁っていた。
練習の後、談話室で一人、スマホとにらめっこする。
この映像のAは、一体どっちのAなんだろう。映像が撮られた時期を調べると、恐らくこっちの世界に最初から存在していた方のAだと思われる。
でも、向こうの世界から来たA、おれがここでの時間を共に過ごしてきたAと、なんの違いも見受けられない。
これが、違う人間なのか――
「随分熱心に見ているね」
「わあああっ！」
右肩のすぐ後ろで声がして、おれは椅子から飛び上がる。
「おまっ……びびらすなよ！」
「想像以上のリアクションを見られて、嬉しいよ」
「普通に声かけろ馬鹿！」
悪びれる様子もなく、満面の笑みを浮かべる野坂。
イヤホンをしてたから、入って来たのにまったく気付かなかった。それにしても、気配無さすぎだろ。侍の次は忍者キャラでも狙ってんのか。
「最近、やけに熱心に見ているよね。会えなくて寂しいの？」
「ばっ……違えよ！ いつ記憶が戻ったのか、手掛かりがねえかなって見てただけだ」
おれは壁際のソファに腰を下ろす。続いて野坂は、おれの斜め前のソファに座った。
「なるほど。それが分かれば、記憶が戻るきっかけとなった出来事も推測できるね」
野坂の言う通りだった。同じことを今のAにもしてもらえば、記憶が戻るかもしれない。そう思ったのだが……。
「さっぱり分かんねえんだよな……」
おれは頭を掻いて、画面の中のAを見つめる。
白いブレザーを着た、制服姿のA。以前、撮影の手伝いに行ったときの映像だ。それほど時間は経っていないのに、随分懐かしく感じる。
「映像から判断するのは、難しいかもしれないね」
立ち上がって、野坂が横から画面を覗き込む。
「やっぱ、そうだよな……」
無謀だとは思っていた。そもそも、ファンの間でさえ、噂にもならなかったんだから。
今更こんなことをする気になったのは、手詰まり感を払拭したいという思いもあったかもしれない。
「ああ、そうだ。ヒロトくん、ぼく、いいことを思いついたんだけど」
「はぁ……？」
画面から目を離し、顔を上げると、こちらを見下ろす野坂と目が合う。
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鈴松信@誤字り姫@しんしん[受験により低浮上](プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気読みしちゃいました!向こうの世界からオリオンの世界にエイリア石で来る…っていう考えが私の作品と似ていて凄く興味を惹かれました!更新無理せずにファイトです! (2019年6月11日 17時) (
レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年6月2日 1時
