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意外 ページ7

Aは意外と従順な男らしく、僕の手を離す事は決してなかった。夜の帳に溶け込む様に歩いていく僕等は果たして似合っているのだろうか。分からない。Aの独特な服装がやたらと多くの者の目を惹いている事だけは分かるのだが。

 何が食べたいかをAに問い掛けたのだが、僕の食べたい物が食べたいと言った。一度耳を疑ったのだがそれは幻聴でも何でもなかったらしく、生唾を飲み込んだのはつい先程の話だ。とは言っても、僕は食の細い男であると自覚している。その為、食べたい物というのがいまいち浮かばぬのであった。その旨を伝えると、Aは悩んでいるらしく、唸りながら考えている。
 この時に気付いたのだが、Aがぐるると唸るのは癖らしい。何らかの感情が揺れた時に発せられるのであろうと推測する。これが正解であるか否かはまだ分からぬ。

「芥川は何を食べるおれが見たい?」
「…は?」

 またもや耳を疑った。この際さん付けをしないことは問題としない。焦ってしまって、出任せの歯切れの悪い言葉が次々と口から出て行く。それが気に食わないのか、片眉を吊り上げたAは僕へと顔をずいと近づけた。近い、近いぞ。この男は距離感というものを心得ていないのだろうか。

 結局、僕は茶漬けが美味いと評判の店へAを連れ込む事にした。日本に来たからにはまず白米を口にして欲しい。素直にそう思いAへ返答した。Aは口角を上げて僕の手を握る力を強めた。

「良いか、店に入ったら僕の名を呼ぶな」
「承知した。大方、指名手配でもされているのだろう?」
「その通り。分かっているのであれば話が速い」

 店前でぼそぼそと約束を取り付けると先導して店の中へ入る。入ったのは良いのだが、早くも店を間違えた事、Aを抱えて一目散に別の店へ移りたくなった事に顔を顰めた。

「太宰さん、此処の茶漬けも美味しいです!」
「良かったね敦君。お代は国木田君が払ってくれるから心配する事は無いよ」
「何故俺が払わねばならんのだ!!」

 完全に僕の失態だ。これではAがゆっくり食事をとる事は叶わない。矢張り別の店にするべきか。別の所へ行こう、振り向きざまに言おうとしたがAの密かに輝いた瞳を見ては何も言えまい。

「良い店を選んだな…!」

 控えめな喜びの声に、先程まで独りで荒れていた僕の心の平穏は僅かに取り戻された。

あの瞳→←嗚呼



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左目から鯖味噌(プロフ) - 司さん» 芥川にときめいて頂き有難う御座います。とても嬉しいです。これからもときめかせることが出来ると良いなあ…と思いつつ更新しております。最後はどうなるのか私自身余り分かっていない部分がありますが、見守って頂ければと思います。御感想有難う御座いました。 (2018年1月5日 14時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 翻弄されつつある芥川の健気さがいとおしくてときめいております!このままもどかしい関係性の二人もたまりませんが、相思相愛になった時のいじらしさを想像するだけで胸が焦がれそうです笑。素敵な作品をありがとうございます。陰ながら応援しております。 (2018年1月1日 16時) (レス) id: 7ab5912443 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - クロりんごさん» そう言っていただけると嬉しいです。私自身、この芥川結構色々長く心の中で喋るな、程度には思っていたのですが矢張りそうでしたか。もう少し改行出来るように頑張りますね。今年もどうか温かい目で見守って頂けると幸いです。御感想有難う御座います。 (2018年1月1日 8時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
クロりんご(プロフ) - とっても面白くてこの作品大好きです!ですが、改行が少ないので読みにくい気もします。あくまでこれは私の意見ですので、なんとも言えませんが……これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年1月1日 7時) (レス) id: 8489cd9c31 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 鞍さん» 芥川が分からないことだらけの男になっていないか若干の不安を覚えつつ更新をしていますがそう言って頂けると大変励みになります。有難う御座います。鞍さんの応援にしっかりと答えられる様な作品にしたいと思います。御感想有難う御座いました。 (2017年12月28日 12時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2017年12月8日 21時

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