官能 ページ18
いつの間にかAは人の姿に戻っていたが、相も変わらず状況がまるきり分かっていないと言わんばかりに目を見開いている。浅い呼吸が何を意味しているのか、僕には分からない。だが、僕の方へと寄越してきた視線は明らかに助けを求めるそれであって、なんとも加護欲と形容されるであろうものと共に無性の空腹感を僕に与えた。
「僕だ、
「袁傪！」
相手の名を聞くなりAは先程の表情は何処へやら、とても嬉しそうに相手、袁傪の名を呼ぶ。その姿が久々に会う恋人を目にした女の様に見え、途端に僕はつまらぬ気持ちになった。またひとつAと僕の違いをありありと見せつけられた心地だ。
「袁傪、頼むから此方へ来ないでくれ。そこから動かずに私の言葉を聞いてくれ」
機械が袁傪が此方へ接近する音でも拾ったのだろう、Aはコンテナをがつんと殴り獣が縄張りを示す様な唸り声をあげた。
「A、貴様に会話の時間を与えた覚えはない」
「頼む芥川、少し時間をくれ。否、勝手に貰っていく」
Aの肩を掴むがそれを意にも介さず言う。嗚呼、そうか、そういうことか。僕は不自然な程に納得をした。Aはポートマフィアの内情を知るための贄のようなもので、袁傪と呼ばれている男はたった今迎えに来たという事か。
「そう不機嫌にならないでくれ」
困ったふうに笑うAはやけに兄貴風を吹かせているように見えて腹が立つ。僕の足元ですり寄るAの方が好みだったからだ。笑みを浮かべたままAは僕の顎へ手を添え、唇を舐める。犬猫が主人の機嫌を伺うようにざりりと舐める様なそれとは違う、もっと官能的でその先が確かに存在するのだと言わんばかりの誘いを孕んだひと舐め。
してやったと言わんばかりの顔に僕は酷い事をしてみたいと思ってしまう。どんな酷い事をしようか、考える時間を僕は今与えられたのだとやっと理解した。ならば、Aが今誰と話し込もうと関係無い。袁傪はAを連れ戻そうとするだろう。だが構わぬ、Aは既に僕の手の中に居るのだから。
もしかすると、手の中に居るのは僕でそれを握っているのはAなのかもしれぬ。それはそれで良い。心地良く響く低い声は、姿が見えもしない相手との会話を望まんと口を開いた。
「袁傪、君が温厚だからこそ私は君と親友になれた。だからこそ言わせてもらおう、君は何故此処に居る？君は役人だ。暗い社会に足を踏み入れた私の行方など知らない筈」
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左目から鯖味噌(プロフ) - 司さん» 芥川にときめいて頂き有難う御座います。とても嬉しいです。これからもときめかせることが出来ると良いなあ…と思いつつ更新しております。最後はどうなるのか私自身余り分かっていない部分がありますが、見守って頂ければと思います。御感想有難う御座いました。 (2018年1月5日 14時) (
レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
司(プロフ) - 翻弄されつつある芥川の健気さがいとおしくてときめいております！このままもどかしい関係性の二人もたまりませんが、相思相愛になった時のいじらしさを想像するだけで胸が焦がれそうです笑。素敵な作品をありがとうございます。陰ながら応援しております。 (2018年1月1日 16時) (レス) id: 7ab5912443 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - クロりんごさん» そう言っていただけると嬉しいです。私自身、この芥川結構色々長く心の中で喋るな、程度には思っていたのですが矢張りそうでしたか。もう少し改行出来るように頑張りますね。今年もどうか温かい目で見守って頂けると幸いです。御感想有難う御座います。 (2018年1月1日 8時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
クロりんご(プロフ) - とっても面白くてこの作品大好きです！ですが、改行が少ないので読みにくい気もします。あくまでこれは私の意見ですので、なんとも言えませんが……これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年1月1日 7時) (レス) id: 8489cd9c31 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 鞍さん» 芥川が分からないことだらけの男になっていないか若干の不安を覚えつつ更新をしていますがそう言って頂けると大変励みになります。有難う御座います。鞍さんの応援にしっかりと答えられる様な作品にしたいと思います。御感想有難う御座いました。 (2017年12月28日 12時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：左目から鯖味噌 | 作成日時：2017年12月8日 21時
