日暮れ ページ10
治療が終わったのはもう、日が暮れて周りの建物が点々と明るい光を灯し始めた頃だった。
「調子はどうだ。」
「最高。」
顰めっ面の国木田を見て目つきの悪い目を細めてAはくしゃりと笑って見せた。
「すみませんAさん。」
「いいのいいの。あの時はあれが一番いい方法だと思ったから、俺は後悔してないし。」
そう言って、朝頃の何でもない顔で手をひらひらと敦の前で振ったAは、本当に気にしていないようだった。
医務室にもう与謝野の姿は無かった。Aの感謝の言葉でも聞いてさっさと帰ってしまったのだろうか。
「それよりも聞いてくれ!あの芥川の憎らしい顔を引っ掻いてやった!」
「それはまた、君にしては進歩をしたね。」
得意そうに目を輝かせて太宰に報告したAは、進歩したという言葉を聞いてさらに目を輝かせた。
「前など一度も攻撃なぞ当たらなかったからな。」
「後輩の前では少しカッコつけさせて国木田さん。」
眼鏡を押し上げて冷静に敦が来る前の有様を口にした国木田に、苦虫を噛み潰したような顔をしたAを見て、谷崎がまあまあと宥めた。
「そういえば谷崎くん、ナオミちゃんは?」
「先に帰らせました。Aさんが遅くに終わるのはなんとなく、わかってたので。」
それを聞いたAはしょんぼりとまるで敦と始めて顔を合わせた時の犬のような表情を浮かべた。Aは個人的にナオミが気に入っているらしく、少し話がしたかったようだ。
「じゃあ、帰ろうか。」
にこにこと笑う太宰。その表情に書いてある文字は「昼も夜も何も食べずに君を待っていたんだから、責任持って私達全員の晩飯を奢り給えよ。」と、言ったところだろうか。
Aは溜息をついた。
269人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
左目から鯖味噌(プロフ) - 結さん» 一夜と六夜しか未だ読めずにいますし、ひとつの夢と一夜の内容をかけたかったので夢一夜とサブタイトルを付けさせて頂きました主に短編、中編作品ばかり読んでいますが上手く物語に入れる事が出来るように頑張りたいと思います。コメントありがとうございます。 (2016年6月11日 12時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
結(プロフ) - 夢十夜ですね!私、大好きです!いつも応援してます。これからも頑張ってください。 (2016年6月11日 11時) (レス) id: df8cc1ba1e (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - Hiyoriさん» 感想ありがとうございます。楽しみにされた分、良いと思って頂けるような作品を作ることが出来たらな、と思っております。応援に応えられるよう、努力致します。 (2016年5月16日 23時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
Hiyori - 続きも楽しみにしてます!頑張ってください! (2016年5月16日 22時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - konohaさん» いえいえ、お気になさらず。見て下さりありがとうございます。応援に応えられるよう、邁進致します。 (2016年5月15日 20時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2016年5月15日 17時