ふたりのうちひとりが中島敦 ページ6
目の前の先輩は一体何を言っているのだろうか。
「ほう、その証拠は?」
興味深そうにAをじっと見る芥川。その先にいる当の本人Aはまるで「囮になるから逃げろ。」と言っているようだった。しかし、そんな真似は出来ない。
「これが証拠だ!」
異能力、バンパイヤ。水色の光がAを包むと、一瞬のうちに敦が変身する白虎そっくりにAは化けた。自分はこんなに大きな虎になっていたのか、と感じてしまう。
その時、白虎の目は芥川ではなく敦の方へぎろりと目を向けた。次の瞬間、制御のきかない敦の変身のように突如白虎は襲いかかってきたのだ。逃げなければ、先輩の行為が全て無駄になる。前のように太宰が盗聴器をつけて良いタイミングで来てくれるとは限らない。
一目散に敦は駆け出した。なりふり構わず来た道を駆け抜けた。その後ろ姿をホッとしたような目で見つめる白虎もとい、A。あのスピードで駅まで突っ走ってしまえば探偵社へ帰るまでは安全だろう。
異能力を一旦解くと、芥川は口元を歪めた。
「なるほど、人虎は先ほど逃げたほうか。とんだ狐の下手な芝居を見せられたものだ。しかし、貴様を連れて行けば70億、人虎も生け捕りにすれば70億。悪い話ではない。」
ごほ。ごほ、とまた咳をした。それをじっとりとした目で見つめていたAは口を開いた。
「俺、敦くんより良い異能力だと自負してるわけだし、70億は安すぎる。」
嗚呼、此奴は好かないな。両方は見つめ合って確信をした。
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左目から鯖味噌(プロフ) - 結さん» 一夜と六夜しか未だ読めずにいますし、ひとつの夢と一夜の内容をかけたかったので夢一夜とサブタイトルを付けさせて頂きました主に短編、中編作品ばかり読んでいますが上手く物語に入れる事が出来るように頑張りたいと思います。コメントありがとうございます。 (2016年6月11日 12時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
結(プロフ) - 夢十夜ですね!私、大好きです!いつも応援してます。これからも頑張ってください。 (2016年6月11日 11時) (レス) id: df8cc1ba1e (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - Hiyoriさん» 感想ありがとうございます。楽しみにされた分、良いと思って頂けるような作品を作ることが出来たらな、と思っております。応援に応えられるよう、努力致します。 (2016年5月16日 23時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
Hiyori - 続きも楽しみにしてます!頑張ってください! (2016年5月16日 22時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - konohaさん» いえいえ、お気になさらず。見て下さりありがとうございます。応援に応えられるよう、邁進致します。 (2016年5月15日 20時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2016年5月15日 17時