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口先 ページ5

電車はそれなりに混んでいて、とてもさっきの話を続けられるような雰囲気ではなかった。そんなガタゴトと車両が揺れる音だけが響く空間から二人は、二駅ほどで解放された。

 
「依頼人によると、ここら辺で猫が迷子になったとかなんとかなんだけど。」

 

こりゃはめられたな。と面倒くさそうにAは敦に向かってそう言った。そう言う理由は、場所にあった。周りは薄暗い路地裏。それなりに広い幅があるが、遠くから車の走る音が聞こえるだけの全く人気のない場所だった。猫は暖かい場所を好むため、こんな場所にいるなんてことはめったにない。

 

「御名答、此処に猫など初めから居ない。居たのは、僕のみ。」

 

ごほ、ごほ、と現代社会から隔離でもされたような静かな路地裏に、男の咳が響いた。しかし、この咳はAのものでも、敦のものでもない。

 

何故、彼奴が此処に居るのか。敦は身の毛がよだった。自分はただ、先輩の仕事を見学に来ただけであって、なのに何故、この男が。

 

「ああ、迷子の猫はキミってわけか。芥川龍之介。」

 

「巫山戯た事を。」

 

ぴりぴりとした口先だけ、出任せな軽口を叩いたAの度胸に肝が冷えた。何だって絶対に出会いたくない相手の前でそんな言葉を出すのか、心なしか芥川の口元が歪んでいた。

 

「お前は誰だ、探偵社の人間ではないな。」

 

「...僕は中島敦だ。」

 

そう答えたのは敦ではない、目の前の先輩だった。

ふたりのうちひとりが中島敦→←異能力名の由来



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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左目から鯖味噌(プロフ) - 結さん» 一夜と六夜しか未だ読めずにいますし、ひとつの夢と一夜の内容をかけたかったので夢一夜とサブタイトルを付けさせて頂きました主に短編、中編作品ばかり読んでいますが上手く物語に入れる事が出来るように頑張りたいと思います。コメントありがとうございます。 (2016年6月11日 12時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢十夜ですね!私、大好きです!いつも応援してます。これからも頑張ってください。 (2016年6月11日 11時) (レス) id: df8cc1ba1e (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - Hiyoriさん» 感想ありがとうございます。楽しみにされた分、良いと思って頂けるような作品を作ることが出来たらな、と思っております。応援に応えられるよう、努力致します。 (2016年5月16日 23時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
Hiyori - 続きも楽しみにしてます!頑張ってください! (2016年5月16日 22時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - konohaさん» いえいえ、お気になさらず。見て下さりありがとうございます。応援に応えられるよう、邁進致します。 (2016年5月15日 20時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2016年5月15日 17時

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