悪態 ページ11
逃がすまいと腕を掴まれ、ずるずると太宰に引きずられるように、Aは夜の横浜を歩いていた。先頭の国木田は歩くのが遅い、予定が狂う、等と呪文のように延々と文句を言っている。どうしたらそこまで出てくるのだろうか?それを横で聞いている敦は苦笑するばかり。谷崎はと言うと、たまにちらちらとAを心配そうに様子を伺っていた。
「此処、敦くんがしこたま茶漬けを食べさせてもらった店だよね。」
ぴし、としっかりとした太宰の長い指が指した先を追うように、店を見つめた。あの茶漬けは凄く美味しかったな、と口の中に溜まった唾を敦はごくりと飲み込んだ。それを横で見ていた谷崎がすかさず声を掛けた。
「じゃあ、此処にしませんか?Aさんが奢るってことなンで。」
「それはいいな。」
「人の金だと思えばすぐこれだ。」
構うことなく店の中へ入っていく国木田や谷崎の背中を恨めしそうに睨むAの人間臭い姿を見て敦はくす、と笑ってしまった。Aは人間だが、漫画の影響なのか何処か自由奔放な野生動物にも見えてしまうのだ。
「朝霧くんは今日もウェコに似ているね。バンパイヤとも似ているけど。」
敦の心を見透かしたような言葉をAに投げかけた太宰はそうぼやいて店の中へと入って行った。勿論、それが耳に入る距離に居たAはむっすりと不機嫌な顔をしてアンタには何も奢らねえ、と悪態をついて店の中へと入って行った。
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左目から鯖味噌(プロフ) - 結さん» 一夜と六夜しか未だ読めずにいますし、ひとつの夢と一夜の内容をかけたかったので夢一夜とサブタイトルを付けさせて頂きました主に短編、中編作品ばかり読んでいますが上手く物語に入れる事が出来るように頑張りたいと思います。コメントありがとうございます。 (2016年6月11日 12時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
結(プロフ) - 夢十夜ですね!私、大好きです!いつも応援してます。これからも頑張ってください。 (2016年6月11日 11時) (レス) id: df8cc1ba1e (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - Hiyoriさん» 感想ありがとうございます。楽しみにされた分、良いと思って頂けるような作品を作ることが出来たらな、と思っております。応援に応えられるよう、努力致します。 (2016年5月16日 23時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
Hiyori - 続きも楽しみにしてます!頑張ってください! (2016年5月16日 22時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - konohaさん» いえいえ、お気になさらず。見て下さりありがとうございます。応援に応えられるよう、邁進致します。 (2016年5月15日 20時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2016年5月15日 17時