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雑用 ページ22

ナイチンゲールこと与謝野は探偵社でやる事が少し残って居るからと共に帰宅する事を断った。女性一人を残していくのは心苦しくもあったが国木田が大丈夫だと言うことでAも渋々納得した。

外へ出ると冷たい風がAの頬をひと撫でした。もう跡形もなく消え去った傷口が痛むような気がしたが、きっと気のせいだと思う。何しろ、彼女の異能力という超能力めいたそれは非常にバイオレンスな能力であったのだから。ナイチンゲール的なその治療法は傷の事を思い出すたびにある筈もない記憶の片隅からフラッシュバックしてしまう。改めて、Aはぞっとした。

「慣れろ。これからもきっとお世話になる事になるぞ」
「嫌なのだよ…」

Aを気遣ったのか小声ながらも国木田はそう言ったがAは気持ちが沈むばかりだ。

そもそも、彼女の異能力にこれからもお世話になると断定できる時点でこの探偵社は確実にどこかが可笑しい。Aが言う事では無いのだろうが、頭のねじが三本くらいは吹き飛んでいるに違いない。

「そう言えば、Aさんって俳優だった頃ってどんな役を演じていたんですか?」
「えっ」

「あ、それは私も気になっていたんだ」
「どんな役だ。主役か?主役なのか?」

敦の一言に大人げない大人がAへ詰め寄って来る。この二人は身長が高い。例え太宰がにこにこと笑っていようともその威圧と言うのは計り知れないものであった。

にたりと下手くそな笑みが引き攣る。さて、どう説明しようか。自分がとんでもない大根役者であることを、どのような手法で知らしめるべきか。Aの頭は先程の芥川の時よりもずっと回転をしていた。

「そ、その話はよして欲しいのだよ…何もしていない。劇場前でビラ配りしかしていないのだよ」
「そういう役があるのか。一体どんな演目だ?」

「ちょ、ちょっと国木田さん!もしかしてAさんそれって…」
「静かに。これ以上Aさんの心を傷付けてはいけない!それに黙っていた方が面白そうだ」

ずいと顔を寄せる国木田にAはもう涙が出そうになる。これは確信しての事なのかはたまた本気でそう思っているのか。困惑に困惑を重ねたAの頭ではそれすらもう分からなくなっていた。

レンズ越しに見える国木田の目は嫌に真剣で、どんな言葉が浮かんだとしても全てその目によって打ち消される。もはやAの声は喉から先に出る事は叶わない。

「A、どうなんだ」

「才能が無いから雑用だったのだよ莫迦!」

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左目から鯖味噌(プロフ) - 書けるように頑張りますね。感想ありがとうございました。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 21さん» 有難う御座います。言葉が気持ち悪くないか何度も自問自答していたのですがそう言って頂けて嬉しいです。更にはご本人の方にも興味を持って頂きとても喜んでおります。お金を払いたい位だなんて恐れ多い言葉以外の何ものでもありません。楽しみにして頂けるような作品が (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 七葉さん» コメントありがとうございます。大抵今後の展開を考えない行き当たりばったりの不安定更新ではありますが七葉さんの温かいお言葉のお陰でまだまだ頑張れそうです。これからもっともっと楽しめるお話にしていく事が出来たら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年12月6日 21時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - とても続きが気になります!これからどうなっていくかが楽しみですね!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月6日 20時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2017年11月3日 14時

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