異議 ページ16
「前職業…俳優！？」
「その顔で二七って…しかももうすぐ誕生日と来た」
ぐさりぐさり。沢山の視線がAへと刺さる。どうやら言いたい事が沢山あるらしく、その目は段々と猫の様に細められていくではないか。事実を全てそこに書いただけだ。何も偽りはない。なのに何故、何故なのだろう。
「どうして太宰と国木田さんすら私をその様な目で見るんだい？そろそろ怒りたいのだけど…」
「だって、嘘でしょう？」
「嘘を書くなと言った筈だが」
全く持って信じちゃくれない。Aは静かに拳を握ったが、ここで怒り狂っても意味は無い。拳を握る力を何とか緩めれば、高いヒールのブーツをカツカツと鳴らしながら国木田の元へ歩み寄り、履歴書を奪った。
「そんなに言うのなら見せないぞ！否、そもそも見世物では無いのだよ！？」
「知ってるけど…なんか、疑いたくなりません？」
好青年、谷崎の言葉に全員がうんうんと頷く。駄目だこの探偵社。皆同じようにどこか外れた者達ばかりだ。そもそも仕事はどうした、やるべき仕事はこんもりと積みあがって居る筈だろう。太宰のデスクの上の様に。
思わず目を逸らしてしまう程にえげつないその書類の量に額へ手を当てて逃避すると、履歴書を持ってただ静かに佇む福沢の元へと差し出す。
「すみません。どうも上司が私の経歴に異議を唱える者で…」
「何処からどう見てもそうだろう！？」
「先入観を持って物事を考えるのは良くないと思うのだよ」
一々大きな声でAを怒鳴りつける国木田に、Aは舌を出して抗議をするがそれだけすればただ福沢の言葉を待つ事にした。
「…良いのではないか、後で御家族に確認を取れば良いだけだ」
その瞬間社から異議を唱える者が消えた。恐らく、自分たちの英語力で果たして現地民に着いて行けるのかという一抹の不安を覚えたからであろう。かと言ってAに電話を取らせると良い様に言われてしまうやも知れない。つまり、これ以上異議を唱える者は莫迦だという結論に至ったのであろう。
「どうやら皆これで良いと許可を出している様だが？」
「有難う御座います」
くふくふと小さく笑う福沢に対し、Aもにやりと凶悪な笑みを浮かべて見せる。この男、実は自然的な笑顔を浮かべる事に対しては滅法不得手なのであった。
Aの手から履歴書を受け取れば、福沢はそれに一通り目を通した後引き出しへとまるで壊れ物を預かる時の様に、それはもう丁寧にしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
左目から鯖味噌(プロフ) - 書けるように頑張りますね。感想ありがとうございました。 (2017年12月27日 11時) (
レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 21さん» 有難う御座います。言葉が気持ち悪くないか何度も自問自答していたのですがそう言って頂けて嬉しいです。更にはご本人の方にも興味を持って頂きとても喜んでおります。お金を払いたい位だなんて恐れ多い言葉以外の何ものでもありません。楽しみにして頂けるような作品が (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 七葉さん» コメントありがとうございます。大抵今後の展開を考えない行き当たりばったりの不安定更新ではありますが七葉さんの温かいお言葉のお陰でまだまだ頑張れそうです。これからもっともっと楽しめるお話にしていく事が出来たら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年12月6日 21時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - とても続きが気になります!これからどうなっていくかが楽しみですね!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月6日 20時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：左目から鯖味噌 | 作成日時：2017年11月3日 14時
