検索窓
今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:29,227 hit

合格 ページ14

「其処までだ!」

背後からの突然の声。それはつい昨日ぶりに聞いた声であり、それでも大きな声なだけあって新鮮味を感じる。そんな声が、全てを制止させた。
大口を開けて爆発物を飲み込もうとするA。無表情でそれを見つめる着物の少女。頬を押さえる頭の可笑しい青年。何故か久寿玉を持っている国木田。その光景を当然とでも言う様な顔つきで仁王立ちする武装探偵社社長、福沢。

「社長!下がってください、強盗というかなんと言うか…刺客みたいな男です」
「もう良いA、あれは社員だ」

「…社員?」

目をぱちくりさせる。流石のAにもこれは分からない。何故こんな騒動が起きるのだ。ナイフを持っていたのだぞ、爆発物を持っていたのだぞ。今だって爆発物はカウントを続けているのだぞ。それとも、突入する前にAが思っていた芸能事務所という仮説が本当になってしまったのだろうか。

「入社試験合格おめでとう、Aさん」

福沢の前をすり抜け笑顔を浮かべている太宰はひらひらと手を振る。国木田が手にしている久寿玉の糸を白髪の少年が引く。それと同時に、爆発物のカウントが零になる。爆発する、思い切り目を瞑った。

「Aの上司となる国木田独歩だ。まずは入社試験を無事合格して居る事を前提として話をしよう。おめでとう。お前はこれからこの武装探偵社の掛け替えのない社員だ。代用など出来ん社員だ。無断欠勤、無断遅刻は厳禁だ。分からない事があるのならばなんでも俺や太宰達に聞いてくれ。以後よろしく頼む」

爆発したのはAが先程口の中へ居れようとしていた物では無く、国木田の顔であった。林檎よりもずっと真っ赤な顔をして震えている。まさか、この爆発物は設定した時間にメッセージが流れる仕組みになっていたのだろうか。理解をした途端、Aも同じく顔を真っ赤にした。

ごほんごほん、と国木田が咳払いをする。そろりそろり、とAが目を逸らす。どことなく似ている二人組に、皆可笑しそうに笑った。嗚呼、自分ばかりがこんなにも良い思いをしても良いのだろうか。じくじくと胸が痛む。けれど、良いと思ってしまう自分が居る。そんな自分、ナイフで喉笛を掻き切ってしまえば良いのに。けれど出来ない。青年から取り上げたナイフは相手に突き刺すと刃が引っ込む玩具だったのだから。

「ウォルター・Aです、これからお世話になります」

深々と、頭を下げた。

白髪→←爆発物



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (59 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
40人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

左目から鯖味噌(プロフ) - 書けるように頑張りますね。感想ありがとうございました。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 21さん» 有難う御座います。言葉が気持ち悪くないか何度も自問自答していたのですがそう言って頂けて嬉しいです。更にはご本人の方にも興味を持って頂きとても喜んでおります。お金を払いたい位だなんて恐れ多い言葉以外の何ものでもありません。楽しみにして頂けるような作品が (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 七葉さん» コメントありがとうございます。大抵今後の展開を考えない行き当たりばったりの不安定更新ではありますが七葉さんの温かいお言葉のお陰でまだまだ頑張れそうです。これからもっともっと楽しめるお話にしていく事が出来たら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年12月6日 21時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - とても続きが気になります!これからどうなっていくかが楽しみですね!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月6日 20時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2017年11月3日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。