☆水 リゾット ♀ ページ22
目が覚めた時、辺りは赤ばかりであった。否、寧ろ赤しか無かった。何故こんなにも赤いのか、Aがそれが何から生み出された赤なのかを理解するよりも先に、体が全てを拒絶した。途端に喉がからからになり、目からはぼろぼろと涙が零れる。身体だって、小刻みに震えていた。
それは手で触れると、どろりとしていて生温かった。それに何だか鉄の匂いがする。分かりきっていた事なのだが、血だ。辺りの赤全て血だ。
此処は、血の海の端だ。
「目が覚めたか」
早く此処から逃げ出さなくては。生まれたての小鹿でもここまでではないであろう震える足を無理矢理に言う事を聞かせる。勿論、言う事を聞いてはくれない。特殊な訓練を一度も受けた事の無い、平和ボケしたAには対応しきれない。そんな時、声がした。男の声だ。声と共に、足音が近付いて来る。やや足を引き摺った、安い革靴の音。
「そろそろ新しい靴を買うべきか」
つい先日、そんな言葉をAは耳にしていた。知人とも、友人とも言いにくい男なのだが、どうやら足音の主は先日の男と同一人物だろう。その男はそれと一緒に金が無い事もぼやいていたのだから。
震えていた体はほんの少しだけマシになった。自分が知っている顔が態々助けに来てくれた。おとぎ話に出て来るお姫様でもここまでグロテスクな体験はしたことが無いだろう。無理矢理に笑みを浮かべながら、額の汗を拭う。
「ええ。ついさっき目が覚めたの」
吐き出された声はやけに震えていた。体の震えの代わりに今度は声が震えているらしい。泣きながら、声を振るわせるだなんて。
けれど、男、リゾット・ネエロはそんな事を気にしない。きっと今頃恐怖で漏らしていなかっただけ上等だとでも思っているのだろう。若いくせに、女なのに。
だが、リゾットは存外気が利くイタリア男なようで、手に持っていたミネラルウォーターをAに差し出した。その手には血が一滴も付いていない。それどころか、青白く見える。男という性別の人間とは、大抵ごつごつとしていて骨が太く赤みを帯びた手をしているのだとばかり思っていたから、Aは初対面の時幽霊か何かだと思った。
何気ないリゾットの気遣いが嬉しい。けれどもそれに安心しきってしまったらしく全身の力が一気に抜けてしまった。お蔭様で手で汗を拭うことはできるがミネラルウォーターを受け取って、自力で飲むことが出来ない。
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左目から鯖味噌(プロフ) - まろんさん» 初めまして。お返事が遅くなって申し訳ございません。億泰ですね、分かりました。かなりのお時間を取らせる事になってしまいますが一生懸命書かせて頂きますね。今回はリクエストをして頂き有難う御座います。 (2017年9月17日 18時) (
レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - はじめまして！リクエスト良いですか。億泰の短編を見て見たいです。億泰の小説が少ないで (2017年8月20日 18時) (レス) id: 0981dc5437 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 傾国萌えのセネンさん» リクエスト有難う御座います。本当にのろのろと更新をしていますがそれでも確実にお答えしていきたいと思います。いつもお読みいただきありがとうございます。 (2017年8月17日 20時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
傾国萌えのセネン - 第四部の音石明と第五部のリゾット・ネエロでボスのもう一人の娘の夢主をお願いできますか? (2017年8月4日 23時) (レス) id: 8368aa4f80 (このIDを非表示/違反報告)
傾国萌えのセネン - 左目から鯖味噌さん» ありがとうございます、楽しみに待ってます。 (2017年6月3日 14時) (レス) id: 8368aa4f80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：左目から鯖味噌 | 作成日時：2017年3月7日 13時
