子供２１ ページ21
〜銀時side〜
まだ脳裏に焼き付いてやがる。
こびりついてやがる。
Aが…刺された瞬間の。
あの一瞬のワンシーンが、頭から離れないでいる。
死んだように眠るAのそばで、自分の怒りを鎮めるよう彼女の頭を撫でていた。
生きてるから良かった、無事だから安心した。
仲間はそう口々に言ったが、俺は安堵する余裕はなかった。
運良く急所から外れたところに攻撃された。
運良く、だ。
これが本当に急所だったら。
確実にAは死んでいた。
最悪の事態が一瞬で計算され、気が狂いそうになる。
Aが、死ぬ…？
「A、起きろ…。なぁ、起きろよ」
小声で話しかけるが、ビクともしない。
息はある、そんなこと分かっている。
けど、その時の俺は何もかも信じられなくなったようにAの名前を言い続けた。
そしてそれは徐々にエスカレートし、ついには大声で彼女の名を叫ぶ。
「起きろよA！！死ぬな！！死ぬんじゃねぇよ！！！！！」
「どうした！！っ銀時、やめろ！！！」
出ていったヅラが戻ってきて、Aの肩を掴み揺さぶる俺を抑えた。
腕を後ろからホールドされる。
「うるせェ離しやがれ！！Aは俺の家族なんだよ！！返せよ！！！！」
悲痛な叫び声だったと思う。
ヅラは全力で俺を制御していたが、徐々に力を弱めていく。
俺はヅラの腕を振り払い、Aに抱きつく。
「…頼む！！お前が生きてねぇと…俺は…！！！」
情けねぇ小さい声が、その部屋に響いた。
すると、ピシャンッと障子の閉まる音がした。
振り向けば、そこには高杉が立っていて。
ゆっくりこちらに歩いてくると、俺の肩に手を置く。
「怪我人に抱きつくな」
冷静な声にイラッとくる。
素直にAから離れ高杉を睨むと、高杉はしゃがみ、寝かされたAの顔をまじまじと見た。
そのまま何秒間か動きを止め、ただひたすらにAを眺めていた。
その間、俺の腹の中は嫉妬心でいっぱいだった。
こいつは俺よりも冷静だ。
今の現状をよく理解し、動揺せずにいる。
少し俺より先を行く高杉に、腹が立って仕方がなかった。
「ズラ、あとどれくらいで目が覚める見込みなんだ」
静かに高杉が聞く。
「あ、あぁ…三日も経てば意識は戻ると思うぞ」
「長ぇな…。なるべく水分や食事を喉に無理矢理でも通せ」
やつはそれだけ言い残すと、立ち上がって行ってしまった。
俺はただ、Aの眠る顔を見つめることしか出来なかった。
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作者名：お茶
| 作成日時：2019年11月8日 23時
