子供13 ページ13
情けねぇ。
そんな事を口に出し、暴言を吐き散らす自分が情けねぇ。
「ちょ、ちょっと待ってください銀時さん」
そう男に言われた時、ものすごい音が響き渡る。
チラッと横目で見れば、ズラが泥酔し机をひっくり返した様だった。
慌てて駆けつけるA。
残された俺は、男に声をかける。
「どうした、Aに惚れでもしたか?」
煽るように余裕の笑みを見せれば、奴は眉間にシワを寄せる。
すると、その返答を無視し、真っ直ぐなめで俺を見つめてきた。
「前から思ってましたけど、Aさんに随分執着してるっすよね。何でなんすか?」
苦笑い、に近い笑みを浮かべる男。
俺は、先程むやみに振り下ろした真剣を強く握る。
そして、男の鼻っ柱ギリギリまで刀の先端を向けた。
「執着でも依存でもねェ。あいつも俺も、互いに離れられんねぇ関係なんだよ。もしてめぇが割り込むってんなら、そん時ゃ殺してやる」
吐き捨てるように言い、俺は振り返りその場を後にした。
俺だけが執着してるとでも?
なんも分かっちゃねぇな。
そんなもんじゃねぇんだよ。
俺たちの関係は、そんな甘っちょろい言葉で片付けていいもんじゃねぇ。
執着なんて、軽ィ。
それにしても…。
手に握った真剣を鞘に収め、天井を仰ぐ。
白夜叉と呼ばれるようになってから、味方の目の色が変わった。
それは恐怖の色だ。
俺に口をきいていた仲間でさえも恐れ、距離を置かれた。
だんだん息がしづらい環境になってきてしまったのだ。
それなのに、あの男は恐れられてる俺に怯えること無く歯向かってきやがった。
目は輝き、真っ直ぐに俺を捕らえようとしていた。
よっぽどバカなのか、根が真面目なのか、恐怖を知らねぇのか。
芯が強いのか。
ま、何にせよあいつもどうせ他の連中と変わんねぇ。
あいつも、Aを女として見てやがるんだ。
それは、少し前のこと。
厠に行こうと廊下を歩いてる時だった。
空き家だった俺たちの陣地、この建物は古い。
障子は破れ、月の光が部屋によく差し込む。
そして、少し廊下を歩けば室内にいる連中の会話の内容が聞こえてくる。
その晩も、でけぇ声で話す馬鹿どもの会話が耳に入った。
普段なら気にとめず歩くのだが、その日は違った。
「マジで可愛いよな、Aさん。怖ェ人だと分かってるんだけどよ、ほら、時々笑うだろ?あれがたまんねぇよな」
「分かるぜ。男はみんな一度は惚れるってもんよ」
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年11月8日 23時