子供9 ページ9
何戦目か分からない昼のこと。
戦闘中に、雨が降ってきた。
血なまぐさい髪が洗われ、雨と共に流れる。
私は雲に覆われた空を仰ぎ、目を瞑った。
うるさい…静かにして、雨の音を聞きたいの。
しとしとと降る優しい音に耳を傾けて、癒されて、安らぎたい。
ダメだ、ここはうるさすぎる。
目を開き、体勢を低く構え振り向くように刀を振った。
背後から襲いかかろうとしていた天人を殺す。
ふうっと息を吐き、刀に付着した血を振り落とした。
昨日の夜の銀ちゃんは、いつもの銀ちゃんじゃなかった。
頭の片隅ではそんな事しか考えていなかった。
あの後、彼は何も言わずに一人で空き家へ帰っていった。
誰が見ても分かる不機嫌なオーラを纏わせながら。
朝、武器の整理をしていた時に、仲間に心配された。
銀ちゃんと何かありましたか?って。
普段、一番会話量が多いのは私と銀ちゃん。
仲が良いと自分でも思っていたし、そりゃ急に話さなくなれば嫌でも何かあったかと心配してしまうだろう。
_____俺がどれだけ我慢してるか知らねぇくせに
昨日言われた言葉を思い出す。
我慢…?我慢とは、一体なんのことなのだろうか。
なぜ私が怒られなきゃならなかったのだろうか。
なんで…
「A!!何をボーっとしてるのだ!」
その時、小太郎兄さんの叫びの声がした。
ハッとなり手に力を込めると、目の前に三人の天人が飛びかかってきていた。
緩急をつけ、急所を狙い仕留める。
倒し終えると、パタパタと小太郎兄さんが走って来てくれた。
「珍しいな…戦闘に身が入っていないぞ」
「ごめんなさい」
「すぐに片付けよう、Aが練った作戦のおかげで今回も勝てそうだ」
私の頭に手を置き、何度か撫でてくれた。
私は頷くように下を向けば、小太郎兄さんは手を離す。
戦闘態勢になり、走って敵陣の元へと行ってしまった。
私も後に続いて向かう。
すれ違いざま、何度も刀を振るい血潮をあびる。
「ひいいいい!!!や、やめてくれぇ!!!」
そんな声がした。
見れば、味方が敵の天人を追い詰めている。
私はすぐにその場に走り、味方の手を取った。
「Aさん…」
「あなた、どうして戦争に参加したの」
腰が抜けたのか座り込み怯える天人に、そう問いかける。
「今のままならまだ生きて帰れるわ」
小声でそう囁いてやれば、ツーッと静かに天人は涙を流した。
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年11月8日 23時