翡翠 １０ 番外編 ページ10
「オジャマシマース…」
つい片言になりながら開けられたドアをくぐった。
ふわりと香るゾムくんの匂い。
ひゃ〜ゾムくんの家だぁ…。
実は付き合ってからゾムくんの家に来たことは無い。
私の心臓が死ぬほど鳴っているのが分かる。
へ、平然を装うのだA、動揺するでない！
「？あがらんの？」
未だ玄関で棒立ちの私に、先に廊下へあがったゾムくんが振り向く。
ドキッとして慌てて靴を脱いであがらせてもらった。
パパッと何処がなんの部屋なのか教えてもらい、最後に私が寝る場所を案内された。
…のだが。
「ぞ、ゾムくん？」
「んー？」
「ベッド一つしかないね」
「うん」
「しかもシングルベッドだね」
「そやね〜」
「…え？あ、え？…えぇ！！？？」
ボッと顔が赤くなり髪が逆立ち、一瞬で彼と私が隣で寝ている妄想が浮かぶ。
そのリアルな映像に更に熱が顔に集まる。
そんな私の様子を見たゾムくんはゲラゲラ笑いだした。
「嫌やったら来客用の布団あるけど、そっちにする？」
しかし気を遣って最後にはそんなことを言ってくれて。
うっ、と押し黙り暫く悩んだ末、小声で「嫌じゃないんだけど、あの…。布団で…」と返事をした。
鬱にいの話のせいで変に意識してしまう。
眉を八の字に「おけ」と笑ったゾムくん。
ポンッと頭に手が置かれ、からかうように撫でられた。
今日は一日家で過ごそうか、なんて話になった。
ソファで二人並んで映画を見たり、ゆったり談笑したり、大学の話しをしたり。
緩く穏やかに流れる時間が心地よくて、ゾムくんと同棲している気分になる。
そっと人差し指と中指に、ゾムくんの同じ指が触れた。
自然と手は繋がれ手の甲を指先で撫でられる。
擽ったくて暖かい。
チラッとゾムくんの顔を覗くように見れば、めちゃくちゃ優しい微笑みを返されてしまった。
「ん？」と首を傾げる姿にドキッと胸が跳ねる。
「なんか不思議な感じ」
「っんふふ、そやね」
「同棲したらこんな感じなのかな」
「かもしれへんな〜」
なんでだろう。
いつもよりゾムくんが大人っぽく感じるのは。
優しく相槌をうつゾムくんがすごく、色っぽく見えるのは。
こしょばい空気に照れてしまい俯く。
すると繋がっていない片方のゾムくんの手が私の頬に触れた。
「A、こっち見て？」
ふわりと優しい声が耳元で囁かれ。
ゆっくり顔を上げると、そっと唇にキスが落とされた。
「ん…」と吐息が漏れる。
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名前はまだ無い - 完結させていただきありがとうございました!! (2023年4月5日 23時) (
レス) id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだ無い - 数年前の投稿にコメント失礼します。シリーズ全て見させていただいたのですがとても好きです。夢小説としても好きなんですが、シチュエーションから言葉選びまでその場を想像できるような文才に惹かれました。学生を終えてしまった身なのですごく染みます…｡ (2023年4月5日 23時) (レス) @page20 id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - お”ぉ”ん”っっずきっっだいずぎっっ (2022年3月28日 15時) (レス) @page20 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 桜さん» 桜さん！コメントありがとうございます！！読んでくださり誠にありがとうございました！！ (2020年7月3日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 番外編完結おめでとうございます！！シリーズが始まった頃から割と見ていたんですが、本当にいい物語です！ (2020年7月2日 23時) (レス) id: 62683d4e75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶
| 作成日時：2020年5月26日 11時
