翡翠 ８ 番外編 ページ8
一緒に勉強して、屋上に行き星を見に行って、二人で思い出を作って、受験して、無事合格して。
長くも短い三年の日々が終わり、俺たちは卒業式こっそり屋上へと忍び込んでいた。
Aは嫌がると思っていたが、なんと乗り気で。
もう最後なのだからとことんやってしまおうと、やたら前のめりで扉を開けた。
「っはぁ〜！さいっこう！！」
胸いっぱいに空気を吸い目を輝かせるは、俺の愛しい恋人である。
思いっきりAのお腹に腕を回し持ち上げる。
グルングルン持ち上げて回せば、彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
「わー！もうストップ！」と叫んだA。
仕方なくスピードを弛めて下ろせば、彼女は目を回しながらしゃがんでしまう。
Aの目の前に自分も膝を曲げ近寄ると、頬を桜色に染めた彼女が微笑んでくれた。
「卒業、おめでとう」
「Aも卒業おめでとう」
額どうしを合わせ、クスクス笑い合う。
「ゾムくんフード取って？」
「えーどうしよっかなー」
「隙ありっ！！」
「うぉ」
パサリと卒業式の日までも被っていたフードが外され、フワッと自分の髪が風に舞ったのが分かった。
Aは優しく目を細め、俺の髪を撫でてくれる。
「うん、よく見える」
「かっこええ？」
「ちょーイケメン」
「ブハッ、まじかー」
「もっと好きになっちゃいそう」
「ええやんもっと好きになれば」
可愛いことを言うもんだからまた抱きしめてしまう。
ギュッと力を込めてAの肩口に顔を埋めれば、彼女もまた同じように背中に腕を回してくれた。
ポンポンとあやす様に軽く叩かれる。
「私の彼氏になってから甘えたさんになってない？」
「気の所為やろ」
「いや間違いない。すごい末っ子感あるよ」
「それよう言われるわ」
周りの友人から「弟をあやしているようだ」と言われることが多い。
自分では分からへんけど。
「ねぇゾムくん」
「ん？」
「会う頻度減っちゃうね」
ふと呟かれた言葉にドクッと心臓が鳴る。
寂しげにAの口から零れた言葉に胸が締め付けられる。
「会いに行くで。お互い実家通いやし、会おうと思えば会えるやん」
「うん。私も待ってるだけじゃなくて会いに行くよ。たくさん会おう」
大人へと近づく階段はこうしてまた一歩踏み出されてしまった。
それは不安を煽るものでもあり。
この先、ずっとAの傍に居られるのかどうか。
子供の俺には、まだ分からなかったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 492人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名前はまだ無い - 完結させていただきありがとうございました!! (2023年4月5日 23時) (
レス) id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだ無い - 数年前の投稿にコメント失礼します。シリーズ全て見させていただいたのですがとても好きです。夢小説としても好きなんですが、シチュエーションから言葉選びまでその場を想像できるような文才に惹かれました。学生を終えてしまった身なのですごく染みます…｡ (2023年4月5日 23時) (レス) @page20 id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - お”ぉ”ん”っっずきっっだいずぎっっ (2022年3月28日 15時) (レス) @page20 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 桜さん» 桜さん！コメントありがとうございます！！読んでくださり誠にありがとうございました！！ (2020年7月3日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 番外編完結おめでとうございます！！シリーズが始まった頃から割と見ていたんですが、本当にいい物語です！ (2020年7月2日 23時) (レス) id: 62683d4e75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お茶
| 作成日時：2020年5月26日 11時
