翡翠 ５ 番外編 ページ5
夏休みの間は自由に学校に入ることが出来て、終了時間までは図書室は解放になっている。
Aと俺は大学を目指している身なので、要は受験生である。
涼しい、集まれる、運が良ければ先生を捕まえて教えてもらうことが出来る。
以下の理由より、わざわざ制服を着て二人で学校に来ていた。
「ひゃ〜暑いねぇ…」
胸元をパタパタ仰ぎながらAは図書室の扉を開ける。
図書室内はクーラーが効いていて、死ぬほど汗をかいていた俺達には天国だった。
ちらほら生徒はいるがそんなに多くない。
Aが窓側の席を指定したので一緒になって席に座る。
向かい側に腰を下ろした彼女は、早速参考書やら模擬テストやらをカバンから出していく。
その光景をぽけーっと見つめながら、自分もテキストを開いた。
…あかん全然集中出来ひん。
しばらく経ち更に人が少なくなった図書室。
妙にイライラしてしまうのは暑さのせいか。
どうも目の前に広がる文の羅列を見ると手が動かない。
あー、と天井を仰ぎふとそのままAに視線を移すと、彼女は長いまつ毛を伏せしっかり勉強していた。
ダメだと分かっていても擽られるのはイタズラ心で。
「なーに？」
机の下。
つま先でチョンっと彼女の上履きをつつくと、こちらを見てくれないがふふっと優しく笑ってくれる。
こっち見ろ、こっち。
そんな意味を込めて何度か攻撃してみる。
しかしAはクスクス笑うだけで、一向に顔を上げる気配がない。
ムスッとガキの様に不貞腐れた俺は「んー」とわざと唸ってみる。
すると、ようやく顔を上げたAとバッチリ目が合った。
可愛い。
「もうゾムくん？全然進んでないよ」
あ、やばい、と思ったが時すでに遅し。
テキストと白紙に近いノートを覗かれてしまった。
「あのー、Aに見とれてたんよ」
「はいはい、飴ちゃんあげるからもうちょっと頑張ろうね」
ゴソゴソっとバックから取り出されたパイン飴を渡された。
あーこれな、美味いよな。
飲食禁止だが隠れて袋を開封しパクッと口に入れる。
「あれ、なんか俺餌付けされてへん？」
「ん？もっと欲しい？」
「いやちゃうわ」
「っふふふ、面白いねーゾムくん」
完全に相手にされてへんやんけ。
もう親と子の様だ。
かまって欲しい俺ＶＳ集中したいAである。
「せっかく二人で来たんやし、ちょっと息抜きせーへん？」
「…うん、そうしよっか」
何だかんだAも疲れてたみたいだ。
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名前はまだ無い - 完結させていただきありがとうございました!! (2023年4月5日 23時) (
レス) id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだ無い - 数年前の投稿にコメント失礼します。シリーズ全て見させていただいたのですがとても好きです。夢小説としても好きなんですが、シチュエーションから言葉選びまでその場を想像できるような文才に惹かれました。学生を終えてしまった身なのですごく染みます…｡ (2023年4月5日 23時) (レス) @page20 id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - お”ぉ”ん”っっずきっっだいずぎっっ (2022年3月28日 15時) (レス) @page20 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 桜さん» 桜さん！コメントありがとうございます！！読んでくださり誠にありがとうございました！！ (2020年7月3日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 番外編完結おめでとうございます！！シリーズが始まった頃から割と見ていたんですが、本当にいい物語です！ (2020年7月2日 23時) (レス) id: 62683d4e75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶
| 作成日時：2020年5月26日 11時
