翡翠 ４ 番外編 ページ4
「A〜」
残り10分で部活動が終わってしまう。
その前にこの眠ってしまった彼女を起こさねば。
すっかり深い眠りについてしまったAの肩を揺すれば、「うぅ…」と唸ってやっと目を開いてくれた。
長いまつ毛がふんわりと起き上がる。
「…あ、んぁ〜」
大きい欠伸にクスッと笑ってしまう。
「おはよ」
「うー…おはよ〜」
寝起きのAかわい。
そっと前髪に触れておでこにキスを落とす。
彼女はくつくつ肩で笑い、俺の首の後ろに両腕を回してきた。
「あ〜…帰りたくないね」
「ええよ俺は。学校泊まる？」
「ゾムくんなら本気でやりそうだから起きます」
…あれ、バレたか。
やろうと思えば出来るしAとやったら怒られてもええし。
なんてアホなことを考えていたら、Aがブレザーを返してくれた。
「ちょっと名残惜しいけど返すね。名残惜しいけど」
「なんで二回言ったん」
「大事すぎることなんで」
「ッフヒヒ、大事すぎるんや」
机やイスを整えるA、俺は窓の鍵を閉めて戸締り完了である。
帰ろ帰ろ、とスクールバッグを手にする。
けど恋人のパタパタした足音がついてこない。
不思議に思い振り向けば、彼女はボーッと教室を見渡していた。
「どうしたん？」
「卒業したくないね」
「…まだ夏やで。でも、そうやね。したないな」
卒業、か。
Aと俺の進路先に選択した大学は、全く違うものだった。
将来の夢が違う、というのが大きな理由である。
卒業したらAに会える頻度が減る。
「卒業した後さ、週一で会うのしんどい？」
「は！？むしろ足りない！！毎日会いたい！！」
「ブハッ、俺も」
目を見開き全開で返されたので、吹き出して笑った。
毎日会いたいとか死ぬほど嬉しい。
俺やって毎日会いたい。
Aは可愛ええからすぐ男に言い寄られそうやし。
大学で会った悪い男に持ち帰りされたら、俺はそいつを本気で殺せる。
心配で仕方ない、そばに居たい。
卒業なんてこなきゃいい。
学校に来るのが面倒くさくてサボっていた俺が、今では卒業したくないと願う。
それほどAの存在がデカいという訳だ。
「帰ろっか、ごめんね寝ちゃって」
「Aの可愛ええ寝顔見れたからええよ」
「やだ見ないでよもー」
少し頬を赤くして、けど嬉しそうに笑うAの手をそっと握る。
すると彼女もまた握り返してくれた。
「夏休みは沢山会おうね」
「…せやな、沢山遊ぼうな」
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名前はまだ無い - 完結させていただきありがとうございました!! (2023年4月5日 23時) (
レス) id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだ無い - 数年前の投稿にコメント失礼します。シリーズ全て見させていただいたのですがとても好きです。夢小説としても好きなんですが、シチュエーションから言葉選びまでその場を想像できるような文才に惹かれました。学生を終えてしまった身なのですごく染みます…｡ (2023年4月5日 23時) (レス) @page20 id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - お”ぉ”ん”っっずきっっだいずぎっっ (2022年3月28日 15時) (レス) @page20 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 桜さん» 桜さん！コメントありがとうございます！！読んでくださり誠にありがとうございました！！ (2020年7月3日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 番外編完結おめでとうございます！！シリーズが始まった頃から割と見ていたんですが、本当にいい物語です！ (2020年7月2日 23時) (レス) id: 62683d4e75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶
| 作成日時：2020年5月26日 11時
