翡翠 １２ 番外編 ページ12
自分の家のキッチンに、彼女の後ろ姿が見える。
そんな不思議な光景をボーッと眺めていた。
てか背中小さいな、元々背も高ないし、体重もバカほど軽いし。
けどバクバク食べるので、それらはどこに消えていくのか気になるものだ。
バクバク食うのは俺もやけど。
ペタ、ペタ、というハンバーグ作りには欠かせない音が聞こえてきた。
タネを作っているのだろう。
包丁を使っていない安全な工程に入ったので、そーっと近づく。
「ひゃぁ！！！ぞ、ゾムくん！ビックリしたぁ…」
「めっちゃビビるやん」
彼女の腹に腕を回し引っ付く。
肩を跳ねさせ大声を出したAが愛おしくなり、その小さな肩に顎を乗せた。
「それデカない？」
「これはゾムくんの」
「っはー、分かってますわ〜」
「こっちは煮込みハンバーグで…」
「じゃあこっちはチーズなん？」
「正解っ！」
Aが動く度、自分も引っ付いて同じ動きをする。
おかしいのかクスクス笑っているAの声が心地いい。
「A？」
「んー？」
「眠くなってきた」
「えぇ！？今からご飯なのに！？」
「なんか、なんやろ…Aに引っ付くと安心して眠くなんねん」
ふぁっと意図せず欠伸がもれた。
生理的な涙を浮かべそっとAから離れると、彼女は手を洗って振り向いてくれる。
「寝ててもいいよ、出来たら起こしてあげる」
「Aがおらんと意味ない」
「なにそれプロポーズの言葉みたい、キャー嬉しい」
「ッブハ、ドラマみたいやーん」
「ゾムくんが言うと様になってるから違和感ないよ？」
「喜んでいいか分からんのやけど」
手が伸ばされ、俺の髪に触れられる。
優しく何度か撫でられると、また眠気がふわりときた。
☕
「っは〜めっちゃ美味かったわ」
「お粗末さまでした」
最高の晩御飯が終わり、手を合わせて「ごちそうさま」を口にした。
彼女は嬉しそうに笑い、面倒臭いことはさっさと終わらそうと席を立つ。
食器を運び始めたので慌てて俺も手伝った。
肩を並べ食器を洗っていく。
「横に並ぶとよう分かるけど、マジでAちっちゃいな」
「あ、バカにしてるでしょ」
「うぇーい、いじけとるやろ〜」
「いじけてないし？てかまず小さくないし？」
「無理ある無理ある」
会話が弾み、ケラケラ笑いながら洗いものをする。
チョンっと肘でAの脇をつつくと彼女もやり返してきて。
その穏やかな時間が死ぬほど幸せに感じた。
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名前はまだ無い - 完結させていただきありがとうございました!! (2023年4月5日 23時) (
レス) id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだ無い - 数年前の投稿にコメント失礼します。シリーズ全て見させていただいたのですがとても好きです。夢小説としても好きなんですが、シチュエーションから言葉選びまでその場を想像できるような文才に惹かれました。学生を終えてしまった身なのですごく染みます…｡ (2023年4月5日 23時) (レス) @page20 id: 4665dec082 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - お”ぉ”ん”っっずきっっだいずぎっっ (2022年3月28日 15時) (レス) @page20 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 桜さん» 桜さん！コメントありがとうございます！！読んでくださり誠にありがとうございました！！ (2020年7月3日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 番外編完結おめでとうございます！！シリーズが始まった頃から割と見ていたんですが、本当にいい物語です！ (2020年7月2日 23時) (レス) id: 62683d4e75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶
| 作成日時：2020年5月26日 11時
