笑顔の先(青) (ページ6)

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笑顔６ページ6

連れてこられたのは、近所の中でも一番大きい公園。

よく広場の中心部でベンチに座って弾き語りしている人を見る。

今日はいないみたい。

「ラッキーやね！行こ！」

手を、握られた。

章ちゃんに引かれて、そのベンチへと走る。

何度かこういうことはあった。

章ちゃんは何というか…スキンシップが多い。

肩を叩いたり、手を握ったり、頭を撫でたり。

そりゃあもう、心臓は破裂しそうな勢いで。

毎度毎度その調子で緊張し、一向に慣れることはない。

屋根のあるスペースに着き、ベンチに二人ならんで腰掛ける。

背負っていたギターケースからギターを取り出し、私に見せてくれた。

「可愛ええやろ～。僕が一番可愛がってるやつやで」

自慢げにアコースティックギターを手にする。

チューニングをする際に弦をはじくのだが、私は釘付けになった。

…ギターって、生で聴くとこんなに綺麗な音なんだ。

「ね、ねぇ、章ちゃん。触ってもいい？」

「ええよええよ～」

自分の大切な楽器を他人に簡単に触れさせるのは嫌な事のはずなのに、彼は嫌な顔せず渡してくれた。

慎重に持てば、意外とアコギというものは軽くて。

章ちゃんの真似をして、不格好だが足を組んで構えてみた。

か、かっこいい…。

「じゃあ、基本のコード教えるな」

章ちゃんが私の指に触れて、動かしてくれる。

この無意識男は…人がドキドキしてるの分からないのか。

「人差し指がここで…そうそう。一番上の弦は弾いちゃあかんよ。これがC」

「鳴らしてみ」と言われ、試しにピックを持って鳴らしてみた。

難しい。音が鳴らない。

弦をぐっと抑えているのだが、力が足りないのかプツンプツンと変な音しか鳴らない。

「難しいね…」

「そうやねー最初はちょっとむずいかもしれへん」

そう言うと、彼は私の指の上に自身の指を同じように重ねた。

そして、グッと指を押してくれる。

「ほい、弾いて」

言われた通り上から弾いてみると

「な、鳴った！章ちゃんすごい！」

「Aのセンスがいいからやで」

目を細め、笑ってくれた。

綺麗な音。

アコギって、こんなに素敵なものだったんだ。

「なんか、章ちゃんみたいだね、アコギって」

「え？」

「章ちゃんに似てる」

柔らかくて、優しくて、心地いい。

すごい、好きになってしまった。