笑顔４４ ページ44
章ちゃんに嫉妬を繰り返していた愛羅さん。
実は、別れる前から浮気をしていたという。
その相手が多部君。
「カフェで見た時ビビりましたよー、まぁあんたは気づいていなかったみたいっすけど」
多部君は、愛羅さんを無理やり自分のものにしようとした。
しかし、章ちゃんと愛羅さんが別れた直後、愛羅さんは多部君との関係も終わらせたいと言い出す。
そこまで章ちゃんに執着していた事実が気に食わなかった。
そう、丁寧に一から多部君は私に教えた。
「愛羅とは全然系統違うんすよ、先輩。あんた遊ばれてんすよ。どうせまたこの男、愛羅の時と同じように他の女と遊びまくって、最後には先輩捨てますよ」
違うよ…。
章ちゃんは仕事が大変で、色々な人と関わりを持たなくちゃいけなくて。
章ちゃんは優しすぎから、しつこい女性にも冷たくできなくて。
そういうの知ってる、遊びじゃない。
だから
そんなこと…。
「そんなこと、なんで多部君に言われなきゃダメなの？」
自分の声は、震えていた。
怖くてどうすればいいか分からなかったけど、気づいたら口に出ていた。
「章ちゃんは、私のことすごく大切にしてくれてる。心配かけないように遅くなる時は必ずメールか電話してくれるし、私が遅くなる時も心配して連絡してくれて…」
会社で嫌なことがあったら、慰めてくれて。
私が疲れてるかと思って、アロマとか入浴剤とか選んで買ってくれて。
少しでも気分転換しに行こうって、手を引いて連れ出してくれて。
「章ちゃん、は…章ちゃんは…私の大切な恋人何です！！バカにしないで！！」
声を荒らげていた。
章ちゃんの手を握り、そう叫んでいた。
「A…」
握り返してくれた手のひらに、涙が出そうになる。
章ちゃん、知ってる？
私強くなったんだよ。
初めて、好きだって思える人に出会ったんだ。
たくさん守られたから、強くなったから。
その分、守りたいって。
そう、思える人に出会ったんだよ。
「過去に何があったか知りませんが、今の私の幸せ、取らないでください…」
力を使い果たしたのか、疲れが出たのか、腰が抜けた。
章ちゃんがすぐ手を出してくれて、支えてくれた。
大切なものを扱うように。
優しく、抱きとめてくれた。
「ごめんな、多部君。僕も今幸せやねん。こんなんで揉めたないやろ、子供やないんやし」
な？と優しく笑う章ちゃん。
攻撃的じゃない章ちゃんに驚いたのか、多部君はポカンと口を開けていた。
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作者名：お茶
| 作成日時：2018年8月6日 22時
