笑顔２２ ページ22
人によってその人に合った曲を提供出来る。
色々な顔を持っている。
変幻自在に色を変える章ちゃんは
「カメレオンみたいだね」
「んー？何が〜？」
「章ちゃん、カメレオンに似てるって話」
「それやったらカメがええわ〜」
章ちゃんはカメが好きだと前から言っていた。
じゃあ、カメさんで。
そう言えば、「ええねええね」なんて言うから。
嫌なことなんて忘れていた。
季節は春へ移り変わり、章ちゃんが私の家に来てから４ヶ月が経った。
私はテレビを見るようになり、毎日のように渋谷さんを見かけるようになった。
渋谷さんの家に行ったあの日から、ちょくちょくメールをくださる彼。
「何しとるん」「後で収録があってな」「また今度連絡するわ」「聞いてほしいことあんねんけど」
内容は、軽いものばかり。
何往復かすれば彼から終わらせるし、次の日になれば彼から始まる。
メールのやり取りをしているのを章ちゃんも知っているし、時々内容を聞かれたりする。
そんなある日。
いつもとは違う音がスマホから鳴り、画面を覗けば渋谷さんからの着信音だった。
「も、もしもし」
時々電話してもいい？とは言われていたけど、実は初めての通話。
「あ、Aちゃん？っへへ、今どこおるん」
酔ってる…？
平日の夜、今日は章ちゃんは仕事があって帰るのが遅い。
一人家で、掠れた聞きなれない渋谷さんの声と相手する。
「家ですけど」
「やすは仕事やろ？」
「はい…どうしましたか？」
「今から言う場所に来てくれへん？」
ペラペラと早口で言われ、急いでメモ帳に書く。
そこは、私が人生で行くような場所ではないことは分かった。
多分、バーだ。
お酒が弱い私は、飲み会の席でも遠慮してあまり飲まない。
だから、お酒がメインのお店には行かないようにしていたのだけれど…。
章ちゃんの大切なお友達。
そう考えると、断るのも申し訳ないと思ってしまった。
「い、行きます」
「ええ子やわほんま、待っとるわ」
電話越しに囁かれた声に、胸が鳴る。
章ちゃんにはメールしておこう。
夜ご飯は冷蔵庫、飲み会の席で遅くなる。
それだけメールで伝え、小綺麗な格好をして家を飛び出した。
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作者名：お茶
| 作成日時：2018年8月6日 22時
