花束11 ページ11
日曜日。午後3時。
入店すると、彼女は花の茎をはさみで切っていた。
「よ〜A〜」
「坂田さん!いらっしゃいませ」
鈴を転がしたような声というのは、Aのためにあるような言葉だな。
天使の声のおかげで、一週間の仕事の疲れがぶっ飛んだ。
俺はチラッとAの手元を見る。
そして、カバンからシンプルな白の紙袋を取り出し、彼女の前に出した。
「この前のお礼。遅くなってわりぃ」
「そんな!お礼だなんて…」
「いいからよ」
腰が低い彼女に半ば無理やりに渡すと、ほのかに頬を染めた。
何その反応。それ反則だろ。
「ありがとうございます…。開けてもいいですか?」
頷くと、ゆっくりと大切そうに開けてくれた。
「可愛い!!」
ビックリした。
普段大きな声なんて出さないAが、嬉しそうに目を輝かせた。
彼女は蓋に薔薇の絵柄が入っている容器を取り出し、さらに口角を上げた。
「これ、ハンドクリームですか?おしゃれですね…」
「薔薇のエキスが入ってるらしいぜ。女物詳しくねぇけど、これなら肌が弱くても大丈夫なんだと」
キラキラした店員(俺の苦手とするタイプ)が、親切に説明してくれた逸品だ。
花の手入れ、つまり茎を切り直したり傷んだ葉やとげなど取り除くため、花屋は滑らすように素手でとってしまう。
その際に、手が荒れてしまう人が多いとか。
Aは手袋をしているが、素手で作業を行う時も少なくない。
彼女の指先には、たくさんの絆創膏が貼られていた。
元々、白く透き通るような手をしているのだが、そのせいもあってか、怪我が目立ってしまい、痛々しく見せてしまっていた。
「手が荒れる仕事だからな。少しでも良くなるように」
初めて、異性に本気のプレゼントというものをした気がする。
何だか俺が照れてしまい、目をそらしてしまった。
こんなに喜んでくれるとは、正直思っていなかった。
今までは、ただ買って渡せばいいとしか思っていなかった俺。
けど、プレゼントというものは、気持ちを形にするから意味のある「もの」に変わるのだと分かった。
「大切に使わせていただきます!」
彼女は、俺を何回惚れさせたら気がすむのだろうか。
屈託のない笑顔は、俺の心臓を強く握ったのだった。
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お茶(プロフ) - ginさん» 暖かいコメント本当にありがとうございます!私の妄想癖が爆発した作品です...笑アニメ化なんてとんでもない!笑 今連載中の作品も坂田銀時メインなので、ぜひよろしくお願いします!ご愛読ありがとうございました!!ヽ(*´∀`)ノ (2018年9月4日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
gin(プロフ) - そして、完結お疲れ様です!他の作品も頑張ってください!応援しています! (2018年9月4日 21時) (レス) id: e17fc6e5e7 (このIDを非表示/違反報告)
gin(プロフ) - とても面白かったです!一気読みしちゃいました笑笑銀さんおしの自分にとってまじで最高の作品でした!読み終わった時に、あぁ、こんな恋愛してみたいなーなんて思ったり笑笑心が暖まるあったかいお話でした!アニメ化なんないかな?笑笑 (2018年9月4日 21時) (レス) id: e17fc6e5e7 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - おもしろくて一気読みしてしまいました!! 完結お疲れ様です◎ 心がホッとするような、何かに気付かされるような、そんな素敵な作品だと思いました。これからの作品も楽しみにしています (2018年9月2日 11時) (レス) id: 451abd5f16 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - 暁さん» 心温まるコメント本当に本当にありがとうございます!!実は、書きながら模索してストーリーを作っていくのですが、こうしたら読者も予想できない展開になるはず...で辿り着いたのが高杉元カレでした笑笑他の作品も読んでいただき光栄です!ありがとうございます! (2018年9月2日 3時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2018年6月10日 2時