先生は甘党ですか【坂田銀時】

先生２６ ページ26

あの事件の日以来、大沢君は私に近づかなく…ならなかった。

というより、以前より私との距離か近くなり、今ではよく話す仲になってしまった。

私も別に嫌っているわけではないので、会ったら声をかけるようにしている。

そう、友達だ。



「国語準備室へ、しゅっぱーつ」



そんなある日の放課後、私は好きな人に捕まった。

手にはたくさんの資料。

隣で私より倍の資料を持った先生に目を向ければ、目を合わせて笑ってくれた。


「いい子いい子」


はぁ…。なんでこの人の笑顔はこんなに破壊力があるんだ。

教室で本を読んでいたところ声をかけられ、手伝ってくれるかと頼まれた。

もちろん断る理由がなかった私は頷き、資料を手に取った。

嬉しいから、こんなのへっちゃらだ。

にやけるのを必死で我慢しながら足を進めると、目的地に着いた。

正直隣を歩くだけでも緊張で死にそうだった。


「そこの机に置いといて」


周りを見渡せば、相変わらずホコリを被った教科書や資料が積み重なっていて。

先生が指さした机にも、色々なものが散乱していた。

私は、机の空いているスペースに資料を置いた。

…ん、なんだろ、これ。

そこで、あるものが目に映った。

手紙、かな。

薄い桃色の便せんが、異様に目立って置いてある。

そして、小さな文字で右下の端には『先生へ』なんて書いてある。

…これ、絶対女の子の字だ。

誰からもらったのか聞いてもいいかな。

気になって、胸がざわつく。


「こんなん、教師がもらっちゃダメだよな」


その時、私の後ろからヒョイっと腕が伸びて来て、その便せんを取った。

やっぱり、ラブレターか何かなのだろうか。

先生、モテるんだな…。


「誰からもらったんですか」


「桜田が知らない子」


思ったより低い声が出て自分でもビックリした、けど。

なんだろう。

彼の声音は冷たくて、お前には関係ないだろって遠回しに言っているように聞こえた。

踏み入れちゃダメなのかな。

でも私の好きな人なのだから、気になって当然じゃないか。


「そう、ですか」


「んでそんな寂しそうな顔すんの？」


今度はやけに優しい声が後ろから聞こえた。

振り向くと、距離を空けて笑っている先生が。


「当たった。ぜってーその顔してるかと思ったわ。寂しそうな顔」


歯を見せて目を細める。

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