アサガオの花言葉10 ページ10
「どうした?ボーッとして」
「へ!?あ、いや…なんでもない」
「体調が悪いなら晋助の部屋へ戻った方がいいでござる」
「ううん!平気」
河上万斉の部屋に入り浸り数分。
晋助の事を思い出していた。
指摘されハッとなり、思わず目を伏せてしまう。
「ねぇ、もっとお話聞かせて」
サングラスをクイッと持ち上げ、彼はまた話を続けてくれた。
音楽。
それは人の心に寄り添い幸せを提供してくれる素晴らしい文化である。
時々晋助が弾いてくれる三味線が大好きで、私はかなり「音楽」というジャンルが好きなのだと知ることが出来た。
「そしてこの世で一番浸透しているのは歌でござる」
「…歌?」
「そういえばAの歌声は聞いたことがなかったでござるな。歌は嫌いでござるか?」
歌、か。
音楽なんて無知に近かった私が歌なんて歌えるはずがなく。
けど、一つだけ母親が教えてくれた歌があった。
「子守唄なんだけどね」
少しだけ、覚えているフレーズを口ずさんだ。
万斉は目を見開いていく。
本当に少しだけ。
たったワンフレーズ歌いきると、彼は「ほぉ」と感嘆の溜息をこぼした。
「…もっと聴きたいでござる」
「え…?」
「歌えるなんて知らなかったでござるよ」
「歌っていっても口ずさむ程度じゃない」
「それでも人を惹き付ける歌声だった」
褒めて、もらえた。
私は特技というものがなかった。
人はみな何か特化したものを持ち、その技能を生かし将来へ繋げるもの。
しかし私にはそれがなく、出来ることといえば身体を使い稼ぐことだけだった。
だから誰かに認めてもらうことなんてなかったし、こうして褒めてもらうことなんてなかった。
単純に嬉しいという感情が湧き出てくる。
「よし。今度から拙者の部屋に来る時には歌を教えてやる。きっとすぐ上達するでござるよ」
「いいの?」
コクンと頷いた万斉。
さらに気持ちは昂り、私にも可能性というものがあるのかと思った。
その日からひっそりと通う万斉の部屋では、小さな私の歌声が響くようになった。
万斉がギターを弾いてくれて、それに乗せて歌を歌うのはとても気持ちのいいもので。
曲を覚え歌っていくたびに、もっと色々な歌い方を覚えたいと子供のように縋るようになった。
そんなある日。
晋助の部屋で歌を口ずさんでいる時だった。
ピシャッと障子が開き、姿を見せたのは晋助で。
「何歌ってんだ」
ニヤリと笑った晋助。
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お茶(プロフ) - チノちゃんさん» ひゃぁぁありがとうございますうう泣 (2020年7月20日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
チノちゃん(プロフ) - 凄く良かったよぉぉぉぉお (2020年7月20日 1時) (レス) id: 5e7e485832 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - きょこさん» わぁぁありがとうございました泣泣 本当に嬉しいです、、、!! (2020年6月28日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
きょこ - 高杉〜!!!かっこよすぎる!おもしろかったです。もっともっと読みたい…キュンキュンしまくりでした。ありがとう^_^ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 5129d38d73 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みきゃんさん» 了解しました!この作品の番外編をいずれ作ろうと思いますm(_ _)m (2020年6月19日 18時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2020年3月6日 13時