アサガオの花言葉９ ページ9
言い返そうとした私だったが言葉を詰まらせる。
…嫌じゃなかったからだ。
もっとして、なんてはしたない事を言ったほど彼のキスを求めていた。
今更言い返すなんてこと出来ない。
「昼の続きの話をしてやるよ」
首を横に振り記憶を払っていると、晋助は胡座をかいて私と向き合った。
昼の続きといえば、お互いに過去の話をして情報を共有しようという、あれだ。
まずは俺から順々に話してやろう、と。
煙管を取りだし咥え、小さな声で話し始めた。
彼の幼い頃は、それはいいご身分だったそう。
地位も名誉も財力も全て親の手の中にあった。
そして、勘当されたという。
その後も淡々と話された内容に衝撃を受けた。
寺子屋ですごした日々、その後に出会った人々。
攘夷戦争時代の出来事。
死んだ、恩師。
先生と口にした晋助の瞳は曇り、光はさしていなかった。
「…先生って言う人は、大切な人なんだね」
彼にとってその「先生」と呼んだ男は、親同然であり教養を教えてくれた人だったらしい。
「先生を奪ったのはこの世の中だ。だから俺は戦い続ける」
鋭い目付きに喉を鳴らしてしまう。
この世界が先生を奪った、と。
それなら、私の幸せもこの世界が奪ったのだろうか。
「てめぇも教えろ。なんで売女なんてやってやがったんだ」
話の矛先が直ぐに私へと変わる。
口から煙を吐き、私の言葉を待つ晋助は何を考えてるか分からない。
しかしその言葉に答えるべく私は話し始めるのだった。
「お金がなかったから。時代に親が殺されたから」
表情を崩さず相変わらず死んだ目で見つめられ、続けろと言う代わりに煙管の煙が吐かれる。
「両親の思い出が密にあるほど二人の事が大好きだった。けどある日突然家に帰ってこなかったの。当時の私は分からなくて、何日経っても帰らない両親を探しに何度も行ったわ。でも姿すら見つからず、途方に暮れた」
きっと、いや。
きっとじゃないか。
親は戦争で殺されたんだ。
…戦争に、の方が的確だったかもしれないが。
「若い私が稼ぐ方法は体を売るしかないじゃない。仕方なかった、教えてくれる人はいなかったから」
周りは全員敵に見えた。
励まし合っていた女たちでさえ、どんな時に牙を剥くか分かったもんじゃなかった。
ある程度の距離は保ち、ある程度牽制する。
それが生き抜くために必要な感情だった。
話し終えても晋助は何も言わなかった。
ただ私を見つめ、煙管を咥え続けるだけだった。
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お茶(プロフ) - チノちゃんさん» ひゃぁぁありがとうございますうう泣 (2020年7月20日 1時) (
レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
チノちゃん(プロフ) - 凄く良かったよぉぉぉぉお (2020年7月20日 1時) (レス) id: 5e7e485832 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - きょこさん» わぁぁありがとうございました泣泣 本当に嬉しいです、、、！！ (2020年6月28日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
きょこ - 高杉〜！！！かっこよすぎる！おもしろかったです。もっともっと読みたい…キュンキュンしまくりでした。ありがとう^_^ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 5129d38d73 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みきゃんさん» 了解しました！この作品の番外編をいずれ作ろうと思いますm(_ _)m (2020年6月19日 18時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶
| 作成日時：2020年3月6日 13時
