ハッピーエンド50 ページ50
「Aさん」
イルミネーションに夢中になって目を輝かせていると、優しい声が隣から聞こえた。
顔を向け「はい?」と返事をすれば、彼はニヤリと笑う。
「ハッピーエンド、嫌いなんですよねィ」
「え?」
「漫画も、映画も、小説も。そんな綺麗なラストなんてねぇって悪態ついてたの、覚えてやすかィ?」
それは、私たちが初めてデートに行った際に聞いた話。
私から借りた漫画がハッピーエンドで終わったのに、彼は有り得ないと口にした。
だからこそハッピーエンドは空想の世界で描かれることが多いと。
そんな彼に対し、悲しい気持ちになったのは今でも覚えている。
「けど、あんたと出会ってその思想は変わりやした」
急に真顔になった総悟くん。
私も笑顔を徐々にしぼませ、真剣に彼の声に耳を傾ける。
「天然で抜けてて、まぁ自己犠牲の塊というか。そんなAさんを好きになった」
すると、手が離された。
彼はこちらに体を向けてくれて。
私も向き合うように体を動かす。
正面の彼の赤い目はキラキラと輝いていて、イルミネーションによって照らされていた。
「ま…そうですねィ。Aさんとなら幸せな最後が迎えられそうだって…確証なんてもんはねぇけど、そう思いやした」
言葉の端から端まで優しくて、キュンと胸が音を立てた。
「私も、そう思います」
自分の声が鼻声で、もう涙が目に溜まっているのを自覚する。
すると彼の手が伸びてきて、溢れそうな涙を親指で拭ってくれた。
目を細め、笑って見せる。
「これって、ハッピーエンドですか?」
肩を揺らせながら、涙を流しながら。
けど笑顔は絶やさないように。
彼に聞こえるように、そう言った。
「終わっちゃダメでさァ。永遠に続いてく関係ですぜィ」
歯を見せて笑った彼に、私も一緒になって笑った。
ハッピーエンド。
素敵な言葉。
「幸せな最後」なんて、素敵すぎるじゃないか。
そんな贅沢をしていいのかな。
総悟くんと一緒にいれるだけで幸せなのに、最後までなんて。
神様は許してくれるのかな。
でも、今更神様がお前は贅沢しすぎているから運命を変えてやるって言っても、私は納得しない。
それくらい私はワガママなんだから。
「来年も再来年もずっと、よろしくお願いします」
帰り道、彼の暖かい手が私を包み込む。
未来の約束をはにかみながらお願いすると、彼は優しく笑ってくれた。
「保証しやす。ずっとAさんを好きでいること」
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お茶(プロフ) - アクヤさん» 素敵なコメントありがとうございます!頑張ります泣 (2019年11月9日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年9月1日 1時