ハッピーエンド1 ページ1
フラれた。
それは突然の事で、家で「別れよう」とあっさり言われた。
私の家で同居していた、三年も付き合った彼氏だった。
勢いよく家を飛び出し、今はとぼとぼと歩いている。
本当に私は、別れを告げられたのだろうか。
そんな事をぼーっと考えながら、雨降る夜の江戸の街を傘をささずにびしょびしょになりながら歩いていた。
冷たい雨水が前髪から頬へ流れる。
同時に涙も溢れてきて。
「何してるんだろう、私…」
暗い夜道を歩く私を照らした街灯に顔を向け、そう呟いた。
確かに、最近上手くいってなかった。
けど、あんなに簡単に言われるとは思ってなかった。
目を瞑れば鮮明に彼との思い出が蘇ってきてしまって。
それほど、私は彼が好きだった。
好きだった、んだよね。
二人で過ごしたあの家に帰りたくなくて。
私はその場にしゃがみこみ、膝を抱えた。
「何してるんでィ」
しばらく思い出しながら泣いていたら、どうでも良さそうな声が降ってきた。
面倒くさそうにも聞こえたその声は、男の人の声。
怖い、なんて感情は全くなく、ゆっくり顔を上げた。
真選組…?
黒い隊服は、この江戸の街の治安を守る真選組のもの。
しかも階級が上の者が着用する隊服だ。
ってことは、この人一番隊の人かな…。
「子供は帰る時間ですぜィ」
ビニール傘を私に傾けるわけでもなく、彼はポケットに片手を突っ込み私を見下ろしながらそう言った。
「…子供じゃないんです。今年で二十歳なんですよ。なのに、…ただフラれただけでいじけてたんです。情けないですよね、もう大人になるって言うのに」
すると、冷酷に降り続け私の肌を叩いていた雨が止まった。
真上を向けば、彼が傘の中に私を入れてくれて。
「女は泣くのが仕事でさァ、何も恥ずかしい事じゃねぇと思いますけどねィ」
「だから早く帰ってクソして寝ろィ」と、私の腕を掴んで無理やり立たせる彼。
淡々とした物言い、そして優しさが見え隠れする言葉。
涙が引っ込んでしまった。
「…めんどくせぇけど、家まで送りまさァ。こんな夜に女一人歩かせたくねェ」
本音がダダ漏れだが、あまりにも素直な彼に拍子抜けする。
今までクヨクヨして泣いていた事が、どうでもよくなってきた。
「ありがとうございます」
今は誰かと一緒にいたい。
少しでもあの人のことを忘れたいから。
そんなことを考えながら、何も知らない真選組の彼と歩き出した。
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お茶(プロフ) - アクヤさん» 素敵なコメントありがとうございます!頑張ります泣 (2019年11月9日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年9月1日 1時