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ハッピーエンド29 ページ29

本屋であんな醜態を晒したあと、フラれて大号泣している所にも出くわしちゃうなんて。

沖田さん、あなた運悪すぎです…。

なんて女に出会っちゃったんですか。


…って、ちょっと待って。

そこで私は、彼とデートした日のことを思い出す。

何も言わず彼が連れてきてくれたのは、私が通いつめている本屋。

沖田さんが初めて私を見かけた本屋である。

_____好きですよねィ、本。初めて会った日、Aさんの自宅に並べられた本棚を見てそう思ったんですけど

そんなセリフを言って書店屋を選んでくれたのだが。

多分、あれ嘘だ。

あの本屋で初めて私を見たから、好きなんだろうってわざわざ連れてきてくれたんだ。

つまり、覚えててくれた…?

一人で頭をフル回転させテンパっていると、足を止めた私に気づいた沖田さんが振り向く。


「だから、一週間前に一緒にいた男が元カレだって、推測できますよねィ」


な、なるほど…。

はぁあぁ。

穴があるなら入りたいとは、今の私の感情のことを言うのだろう。

死ぬほど恥ずかしい女じゃないか。

沖田さんにとって私の第一印象はきっと、「頭のおかしい女」だ。

そりゃ友達も辞めたいって言われるよね。あはは…。

分かりやすく落ち込みため息をつく私。

すると、少し先にいた沖田さんが私の元に戻ってきて。

目の前まで来ると、手を差し出してきた。


「で、より戻すんですかィ?あの男と」


差し出された手とセリフが合っていない。

彼の目と手を繰り返し凝視すると、真顔で沖田さんは続ける。


「この手、とってくだせェ。じゃねぇと俺、死ぬ」


…え?

どういう…

不思議に思いながら瞬きをし開くと、瞳に映ったのは切なげな表情の沖田さん。

その時、何故か私の手は自然に伸びていき、そっと彼の手を取っていた。

冷たくて、孤独な手のひら。

キュッと少し力を入れ握れば、彼は目を見開く。


「俺、Aさんがいい。やっぱ友達やめるとか無理でさァ。傷つけたくねぇけど、それ以上に離れたくねェ。あの男の元に帰んねぇでほしい」


まるで、子供だった。

駄々をこねる子供のような。

声質や姿は大人のそれなのに。

不安そうに、なにか堪えるように。

そんな表情だった。


「怖ェって思われんのは仕方ねぇ事だって、割り切れなかった俺がガキだったんでさァ。俺が」


「ちょっと待って!!」


私は叫んで遮り、握った手をさらに強く握る。

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お茶(プロフ) - アクヤさん» 素敵なコメントありがとうございます!頑張ります泣 (2019年11月9日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お茶 | 作成日時:2019年9月1日 1時

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