箱庭の海40 ページ40
体勢を直し、美波先輩に言われたことを話した。
美波先輩のお遊びに付き合わなければ、Aを傷つけると言われたこと。
それを真に受け、俺はずっと彼女と遊んでいたこと。
Aは目を伏せ、悲しそうな表情で呟いた。
「坂田くん…」
ゆっくり顔を上げ俺と目を合わせる彼女の表情は、とても悲しそうだった。
「私は、坂田くんと楽しく話ができない方が傷つくな」
ドクッと、心臓が鳴った。
思わず目を見開く。
胸が苦しくなり、息が詰まる。
「なんで、そんなこと思うんだよ…」
自惚れていいのか、これは。
「それは…」
「_______借り物競争に出場するA組の坂田銀時さん、至急来てください」
Aが何か言いかけた時、放送が入った。
俺が出る最後の競技。
名前を呼ばれてしまった。
「坂田くん、ラストじゃないじゃん」
ふふっと可愛く笑うA。
聞けなかった言葉がもどかしい。
けど聞き返す勇気がなかった俺は、苦笑いした。
「悪ぃ、行ってくるわ。…てか、歩けそうか?クラス戻れそうなら一緒に行くぜ」
「ダメだよ坂田くんは急がないと」
「少しくらいへーきだっつの」
俺はまたAの背中と足に腕を回すと、ゆっくり持ち上げた。
「キャァッ!」とAが小さく悲鳴をあげる。
「ちょ、ダメだよこの体勢は!」
「あ?んでだよ」
「は、ずかしいよ…」
顔を真っ赤にし目を逸らすA。
可愛すぎんだろ、こいつ。
出そうになった言葉を飲み込み、俺は歩き出した。
そのままグラウンドに出ると、既に競技は始まっていて。
焦らず歩いていたら、慌てたような声でまた放送が流れた。
「A組坂田銀時くん発見!!!お題は「告白したい人」に勝手にしましたからね!これで連れてこられなかったらA組は失格になります!!」
は!?なんだよそれ!!
周りからブーイングが殺到し、俺とAは注目される。
その時、遠くの方から美波先輩が見えた。
メイド服姿の彼女は俺に大きく手を振る。
周りの生徒はその様子を見ていて、煽り出した。
「美波先輩なのか!?」「最近一緒にいるもんな!」「早くこっち来いよ坂田!」
野次馬が叫びまくる。
「さ、坂田くん…早く先輩を…」
腕の中のAが、そう弱々しく声を出す。
______ムカつく。
俺は腕に力を込め、勢いよく走り出した。
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時