箱庭の海２０ ページ20
三日後である。
拡散された噂を聞きつけた女子生徒が、何人クラスに押し寄せてきたのか分からない。
ただ言えるのは、尋常じゃない数だった。
どいつもこいつも顔は分かるが名前は分からない連中ばかりで、俺は一体何人の女を抱いたのかと思い知らされる。
俺がめっきり遊ばなくなってから、女子からの連絡やアプローチが実は絶え間なく続いていた。
が更に、それが今回のせいでさらに悪化した。
「桜田さんと付き合ってるって本当！？」「昨日一緒にいたよね！？」「もう私と遊んでくれないの…？？」
好き勝手言い過ぎだコノヤロー。
発〇期の猫でもそんな盛んねぇぞ。
「あー…俺さ、恋人いねぇから。であれな、好きな子って土方くんな」
その瞬間、俺の席の周りに群がっていた女子達が悲鳴を上げる。
「た、確かに銀時くんがサボったあの日、土方くんもいなかった！！」
誰かがそう声を上げると、隣の席の土方は思いっきり自分の机をぶっ叩き立ち上がる。
「だぁれがそいつとサボるかぁ！！ただの風邪だ！風邪！！」
「照れんなって。俺とあんなことやこんなことした仲なのよ」
「てんめぇふざけやがって！！誤解を生むようなこと言うんじゃねぇ！！」
周りはやはり薄々勘づいている。
Aと俺との距離感に。
けど…。
こいつらが思っているほど、俺たちの距離は近くない。
俺にとってあいつは、まだ遠い存在だ。
俺は、あいつとどうなりてぇんだろうか。
どんな関係に、なりてぇんだ。
☕
「大変そうじゃねぇですかィ」
昼休み。
あまりにもうるさい女子達にうんざりし、俺は中庭に来ていた。
するとダラダラと歩いてきた男子生徒が、俺の隣に座った。
沖田総悟だ。
「Aに踏み込んだからこうなったんですぜィ」
嫌味全開で焼きそばパンを食らう沖田。
「…お前ってよ、Aの何なの？」
ずっと上から目線なこいつにイラッときて、つい聞いてしまった。
「それがアンタの何になる。知って何になるんですかィ」
んだよ、てめぇ自身にも踏み込んじゃダメってか。
めんどくせぇ男だ。
「Aと仲良くなりてぇだけなんだよ。つっても、お前は信じねぇだろうけど」
ここにいても落ち着かねぇだけだ。
そう思い、俺は立ち上がった。
「信じられねぇですねィそりゃあ。けど、それを証明できる何かを起こせば、多少はアンタを信じまさァ」
沖田はそう俺を煽ると、最後の一口の焼きそばパンを頬に詰めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お茶
| 作成日時：2019年4月10日 1時
