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箱庭の海19 ページ19

あまりにも今朝の女子と違う貼り方に、内心嬉しく思った。

痛みが全然感じねぇ。

こういう時、俺の性格の悪い所がでる。


「ってぇ…」


Aがもう一枚絆創膏を俺の頬に貼った瞬間、声を出した。

ほんとは痛くねぇけど。


「ごめん、痛かった?」


慌てて顔を覗きこんだAの手を掴む。


「な、なに…」


「急に優しくなったの、なんで」


そう距離を詰めて聞く。

Aは戸惑った様子で、目を逸らした。

だが息を深く吸い、意を決したのかもう一度俺と目を合わせる。


「嬉しかったから…。噂の事、信じないって言ってくれたり、体目的で近づいてきた訳じゃないって分かったから」


ドクン

そう、俺の心臓が音を立てた。

知らない感情と感覚。

な、んだこれ…。

俺は思わず掴んでいた手を離し、ソファから立ち上がった。


「そ、そうか…」


上手く言葉が出てこない自分に腹が立つ。

俺らしくない。

もっと軽く会話を続ければいいのに。

けど。

冷酷で無感情だと思ったいたこの女は

本当は強がりなだけで脆く繊細な女だと知って。

だから慎重に言葉を選ぼうとしてしまう。

ちゃんと伝わるように、と。


「俺、もっとお前のこと知りてぇ」


まだ目を見て言うのは小っ恥ずかしい。

だから俺はカーテンが風に揺られるのを横目で見ながら、そう彼女に言った。

けど、返事はかえってこなかった。

目線を上げ、Aの顔色を伺うと

どこか寂しそうな表情で、俺を見つめていた。


「お、おい…」


「戻ろうか、坂田くん」


憂いを帯びた表情ってのは、こういう顔を言うんだろうな。

やけに大人びた影のある顔に、俺は何も言えなかった。


教室に戻ると、速攻説教をくらった。

二時間目は科学だったじゃねぇか…。もうちょいサボりゃよかったな。

担当教師は高杉。

後ろに立ってろと言われ、仕方なく授業が終わるまで言うことを聞いていた。


「坂田くん、どうしたの?」


後ろの席の女子生徒が小声で話しかけてくる。

えっと…笹原?指原?佐野原?

やべぇ分かんねぇ、誰この子。


「いや、ちょっと好きな子と保健室に」


「坂田ァ…てめぇ私語とはいい度胸してるなァ。この階の窓から吊り下げてやってもいいんだぜ」


バキバキと手の関節を鳴らす高杉。

話しかけてきた女子も焦って前を向いて、板書された物をノートに書き始めた。


「ね、ねぇ…聞いてた?好きな子って…」


そしてその日、瞬く間に坂田銀時に恋人がいるという噂が広まった。

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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時

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