箱庭の海2 ページ2
放課後になり、俺はスマホに表示されたメッセージに既読をつけた。
「駅前に集合でいい?掃除当番だったの忘れてた」
わざわざ集合っておいおい…。
デートじゃねぇんだから。
「りょーかい。待ってるな」
適当に返信する。
彼氏ごっこしてぇのか、こいつ。
めんどくせぇと思いながら、荷物をまとめる。
ま、しつこくなきゃいいけど。
スクールバッグを背負い、教室を出る。
ダラダラと廊下を歩き、下駄箱に着いた。
靴を履き替えていると、俺の下駄箱の列の向こう側から激しい衝突音が聞こえた。
「なーんで来てくれないの?」
「やっ…離して…!!」
男と女の声。
何してんだこんなとこで。
襲うなら他所でやれっつの。
こういうのは無視が一番。
俺はローファーに履き替え校門に向かおうとした。
だが、しつこい男の声だけが響き渡り、聞こえなくなった女の声が気になってしまい、ちょっと振り向いてしまった。
男女の声が聞こえた下駄箱の列を、そっと覗く。
そこで俺は、目を見開くことになる。
…なんだ、あの女。
男に迫られている女は、今まで見たことが無いくらい
美人だった。
あんな女、この学校にいたんだな。
両手首を下駄箱を背に押し付けられていて、逃げ場がないみたいだ。
男は抵抗しなくなった女を見下し、満足そうに口角を上げる。
「そうそう、最初から大人しくしてりゃいいんだよ。な、行こうよホテル」
ゆっくり、女の顔に自分の顔を寄せる。
ゆっくり、ゆっくりと…
その時、何故俺はあんな行動を取ったのか。
何故気になってしまったのか。
面倒事に首を突っ込むのが嫌いなくせに。
気づいたら俺は、その男に飛び蹴りをかましていた。
「どぅぅぅぅふうぅぁああ」
横から脇腹に思いっきり蹴りを入れると、男は情けない声を出しぶっ倒れる。
「おら!行くぞ!」
俺は女の手を取り、走り出した。
戸惑った様子の彼女は、俺を上目遣いで見上げる。
目を合わせた瞬間、俺は思わず息を止めてしまった。
真青な瞳をしていた。
海底のような色をしていて、沈んでいきそうな。
足を止め、彼女の瞳を見つめる。
すると、息を切らし肩を揺らす彼女が、眉間に皺を寄せた。
「…なして」
「あ?」
「離して!!!!」
力強く振り払われ、俺は唖然とする。
「何なの貴方!!勝手に連れてこないでよ!!!」
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時